なぜなら蚊の仲間とハエの仲間では好む食べものや発生場所が違うし、コバエの種類によって駆除方法や、効く殺虫剤がそれぞれ異なるからです。

たとえば、ドラッグストアで“コバエ用捕獲器”を買ってきたとしても、ハエの仲間のノミバエやショウジョウバエは捕れますが、蚊の仲間であるチョウバエやクロバネキノコバエにはほとんど効果がありません。これは捕獲器から発せられる匂いが、蚊ではなく、ハエが好む匂いになっているからです。

殺虫剤メーカーも、ハエ用捕獲器がチョウバエやクロバネキノコバエに効かないことは了承済みで、対象害虫の欄には「ノミバエ類、ショウジョウバエ類」とだけ記されています。またメーカーによってはパッケージに「すべてのハエに効果があるわけではありません」と、注意書きが記されているものもあるようです。

4種類のコバエの生態と発生場所

では、ここからは一般家庭で見かけることの多い4種類のコバエ(チョウバエ、クロバネキノコバエ、ショウジョウバエ、ノミバエ)に焦点を絞って、それぞれの生態や発生場所について解説します。

【チョウバエ】

チョウバエ(画像提供:著者本人)
チョウバエ(画像提供:著者本人)

体長:1〜5mm
見た目:逆三角形(逆ハート型)で大きな羽を持ち、全身が細かい毛で被われている
発生源:トイレや風呂場、シンクなどの水回り

夜行性のため日中はあまり動かず、壁にとまってじっとしていることが多いのが特徴です。

チョウバエの幼虫(画像提供:著者本人)
チョウバエの幼虫(画像提供:著者本人)

ハエではなく蚊の仲間で、排水溝や浅い水たまり、洗面台やシンクのオーバーフローの穴など、汚泥の溜まりやすい場所に発生し、幼虫は有機物を含んだ汚泥などを餌にしています。

【クロバネキノコバエ】

クロバネキノコバエ(画像提供:著者本人)
クロバネキノコバエ(画像提供:著者本人)

体長:2〜4mm
見た目:黒みを帯びた灰色で、細長い体型
発生源:腐葉土(植木鉢)や腐った野菜。

クロバネキノコバエも蚊の仲間で、コバエの中では比較的細長い体型をしています。主に腐葉土に発生し、植物まわりの菌類や野菜などを食べます。家の中でこのハエを見かけた場合は、観葉植物の鉢植えを発生源としてうたがってください。

また、小学生のお子さんがいるご家庭では、学習教材として学校で育てていた朝顔の鉢植えを子供が夏休みに自宅に持ち込んだのをきっかけに大量発生するケースがあるようです。

私の家でも一度大量発生したことがあります。そのときはダンボールに入った野菜をうっかり腐らせてしまったのが原因でした。植木鉢の腐葉土と腐った野菜は同じようなものですから、繁殖にうってつけの場所だったようです。

【ショウジョウバエ】

ショウジョウバエ(画像提供:著者本人)
ショウジョウバエ(画像提供:著者本人)

体長:2mm前後
見た目:大きな赤い目、ホバリング行動
発生源:キッチンの生ゴミなど

ハエの仲間のショウジョウバエは全体的に丸みを帯びた姿をしていて、飛びながら空中で静止するホバリングをおこなうのが特徴です。顔のほとんどを赤い大きな目が占めていて、酔っ払った顔のように見えることから、酒を好む想像上の動物「猩猩(しょうじょう)」にちなんで名前がつけられたと言われています。

腐った果物や野菜などの生ゴミが主な発生源で、腐敗臭、発酵臭、アルコールや酢の匂いなどを好みます。よく熟れた果物に集まってくるのはそのためです。

【ノミバエ】

ノミバエ(画像提供:著者本人)
ノミバエ(画像提供:著者本人)

体長:2mm前後
見た目:丸い背中、素早い動き
発生源:生ゴミや腐敗した肉。汚水槽

ノミバエは、大きさはショウジョウバエと同じくらいですが、長い後ろ足と、ノミに似た丸まった背中が特徴です。ホバリングはおこないませんが、テーブルや床の上を素早く走り回り、狭い隙間を通り抜けることが得意です。生ゴミのほか、腐敗した肉や、弁当の容器についた残り汁などにもたかり、卵を産み付けます。キッチンやゴミ箱周辺で発生することが多いようです。