スカートの裾を大きく広げて座る女性の姿を描いた2つの絵画。
この2つの絵画を巡る盗作疑惑に日本美術界が揺れています。

記者会見で「この場を借りてはっきり申し上げたいのは、私は盗作しておりません。この3年間、『日本美術院』のホームページに処分内容が掲載され続けたことで、私は盗作作家の汚名を着せられました。これは私にとっては何よりも耐え難いことでした」と盗作疑惑を否定し、処分を行った日本美術院を批判した日本画家の梅原幸雄氏(74)。

トラブルの発端は2023年3月、日本画家の作品を集めた「春の院展」に梅原氏がスカートをはく女性を描いた作品を出品した際に起きました。

梅原氏自身も所属していた日本美術院の理事会が、出品した絵画を「別の画家の作品と似ている」と問題視。

梅原氏は絵の構図が似てしまったのは偶然だと主張しましたが、理事会は「結果的に他人の作品に類似している」とし、日本美術院が主催する展覧会への1年間の出品停止処分を決定しました。

そして10日、東京高等裁判所は、日本美術院が梅原氏に下した処分は裁量権の逸脱・乱用にあたり違法だとして、日本美術院に220万円の賠償を命じました。

判決後、梅原氏は胸の内を語りました。

日本画家・梅原幸雄氏:
本日の判決で私に対する日本美術院の処分が違法かつ無効であったことが認められたことはうれしく思います。

“盗作作家”とレッテルを貼られた苦悩の日々を告白。

日本画家・梅原幸雄氏:
私の45年間の日本画家人生は消し去られたも同然となりました。個展を開くこともできなくなり、私は絶望の中、ぼう然自失となり、絵を描く気力すら失ってしまいました。

さらに梅原氏は、作品の制作過程の詳細も明かしました。

提出された制作過程の数々。
梅原氏は座った女性の姿を描くためにモデルの写真を参考にポーズを作成。
腕の置き方は外国人モデルの写真を参考にしたことを表す証拠も提出しました。

さらに、渥美陽子弁護士は「もともと大下図では赤いラインで線をとっていた。スカートのボリュームが大きすぎるとなり削った。脚についても『大股開きはおかしい』と奥さんにご指摘されて脚の位置をずらした」と説明しました。

一方、梅原氏は作品を発表するうえで盗作疑惑を回避することの難しさも語りました。

日本画家・梅原幸雄氏:
ただ偶然に似てしまったものを描いてはいけないと言われたら、富士山なんかはもともと描けない。

日本美術院は「判決文を受け取っていないのでコメントは差し控えます」としています。