ところが、同じ期間における更新率(その年に新しい管に交換された割合)は、2011年度の0.77%から、2021年度には0.64%に低下しています。このペースで進めば、すべてを更新するのに約140年かかる計算になります。
1年間に2万件の水道管破損
もちろん、耐用年数を超えたからといって、ただちに危険というわけではありません。しかし、設置から50年、60年を経た管が増える中で、事故や破損のリスクは確実に高まっています。
実際、全国では年間2万件を超える漏水や破損事故が発生しています。
たとえば、2018年6月に発生した大阪北部地震では、水道管の破損によって9万4000戸が一時的に断水しました。同年7月には東京都北区で老朽管が破裂し、周辺の住宅およそ20戸が浸水する被害に遭い、およそ30戸が断水しました。

2019年3月には千葉県旭市で、浄水場から送水する基幹管が破損し、約1万5000戸が断水しました。さらに2020年12月には千葉県富津市で送水管が破損し、約5000戸が断水。
2022年2月には再び旭市で送水管が破損し、約1万5000戸が断水しました。「コロナ禍に手洗いができない」という声が強く、水道と衛生の密接な関係を感じさせました。これらの多くは、地下深くに敷設された40年以上前の水道管であり、修復工事も難航しました。
水道インフラの老朽化は、もはや一部地域の問題ではなく、全国的に進行している構造的な課題です。
老朽化した水道施設が引き起こすリスク
水道施設の老朽化が引き起こすリスクとしては、断水や漏水がまず思い浮かびます。しかし、それだけではありません。
老朽化が進んだインフラは、場合によっては土砂災害の引き金となる危険性もはらんでいます。