白や黒、茶トラや三毛など、猫の毛柄はなぜここまで個性豊かなのでしょう。それぞれの模様は偶然の産物かもしれませんが、色の発現は遺伝子の複雑な組み合わせで決まるようです。

猫の毛柄のヒミツや性格の違いなどについて、猫の生態に詳しい富田園子さんに5回にわたる連載で教えてもらいました。

世界初のクローン猫は大失敗!

愛猫を失ってもクローンを作ればよみがえらせることができる…。

そんな飼い主からの需要を見込んで、ペットのクローンビジネスを始めた会社があります。

今から25年ほど前、アメリカのジェネティック・セービングズ・アンド・クローン社です。それまでにも牛やヤギなどのクローンはありましたが、ペットのクローンは世界初で大きな話題を集めました。

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しかし2001年、ペットのクローンとして世界で初めて誕生した子猫を見て人々は思いました。「これがクローン?!」クローンの元である猫とはまるで似ていなかったからです。

クローンの元となったのは、レインボーという名の「茶トラ・キジトラ・白」からなる三毛猫。レインボーから採取したDNAをもとにクローンが作成されましたが、その毛柄は「キジ白」でした。

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毛柄も体格も性格も違った

クローンの子猫はのCC(コピーキャット、クローンキャットの略)と名付けられました。

CCはなぜ三毛柄にならなかったのでしょうか。

さらに体型や性格もまるで違ったといいます。レインボーはふくよかで控えめな性格だったのに対して、CCはスリムで好奇心旺盛でした。

DNAが同じなら同じ個体が生まれるはずだ…。この考えがそもそも間違いだったのです。

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DNAは生命の設計図のようなもので、「設計図が同じなら同じ個体ができるはず」と、昔は考えられていました。

ですが今では、全く同じDNAを持っていても母親の胎内の環境によって、遺伝子の発現が変わることがわかっています。これをエピジェネティクス(後成遺伝)といいます。

同じDNAをもつ一卵性双生児が全く同じ姿や性格にならないのはそのためです。生まれた後も、環境や生活習慣で遺伝子のオン・オフは常に変わっています。あなたの愛する猫とまったく同じ猫を作りたいと思ってもそれは叶わぬ夢。同じ猫は二度と生まれないのです。