生物はみな唯一無二

しかしそれでも、三毛柄にはなりそうなものです。三毛猫になる遺伝子は決まっているのですから。

模様の入り方などが変わるのは仕方ないですが、茶トラの部分がまるでなかったのはなぜでしょうか。

(画像はイメージ)
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これは筆者の想像ですが、採取されたDNAはレインボーのキジトラの部分から採られたのではないでしょうか。三毛猫の「茶トラ」ともう1色「黒かキジトラ」は、性染色体Xのどちらを発現するかで決まります。

CCは「キジトラ」を発現した方のXを持つ細胞からDNAを採取されたため、キジ白になった可能性があります。

一方で、「茶トラ」を発現した方の細胞から採取していたら、おそらく茶白(茶トラ+白)になっていたのではないでしょうか。そう考えると三毛のクローンを作るのはかなり複雑な作業なのかもしれません。

(参照:「三毛猫のオスは珍しい」その理由知ってますか?3色を同時に発現する“染色体X”に秘められたメスの神秘」

(画像はイメージ)
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CCを作った会社は2006年に閉鎖しました。今も中国などでペットのクローンビジネスは展開されていて、なかには見た目がそっくりのクローン猫も生まれています。

真っ白や真っ黒、全身キジトラなどであれば同じ毛柄の猫を作ることは可能かもしれませんが、見た目はそっくりでも中身は別の猫だということを忘れずに。

猫を含めわれわれ生物はみな唯一無二なのです。

富田園子
富田園子

編集&ライター、日本動物科学研究所所属。
幼い頃から犬・猫・鳥など、つねにペットを飼っている家庭に育つ。編集の世界にて動物の行動学に興味をもつ。猫雑誌の編集統括を8年務めたのち、独立。哺乳類動物学者の今泉忠明氏に師事。現在は7匹の猫と暮らす。東京在住。