「中学2年生の頃から、テストの点数は良いのに宿題の提出期限が守れず先生から注意されるようになりました」

こう話すのは、アメリカの高校に通う16歳の娘(Mさん)を持つ母親だ。

小さい頃から忘れ物は多かったが、落ち着きはあり、勉強面では何の問題もなかったという。

高校になって問題が深刻化

ところが中学、高校と学年が上がるにつれ、授業数が増えて課題の量も多くなると、興味のない授業は集中できず、課題の提出もことごとく遅れ、せっかく完成させた宿題もどこかに置き忘れて無くしてしまうようになった。

テストの点数は相変わらず良かったが、成績を維持するために自分を追い込み、不眠や急に怒り出すなど感情の起伏が激しくなり、パニック障害やうつ症状が出るようになったという。

ADHDと診断されたアメリカ在住の女子高生(Mさん)
ADHDと診断されたアメリカ在住の女子高生(Mさん)
この記事の画像(7枚)

「宿題の提出期限がわかっていても、早いものからではなく好きな科目から手を付けてしまう。興味があるものへの集中力はすごいけど、先生と仲が悪かったり興味がない課題は全く進まない。双子の弟がいて、彼はちゃんと期日までにこなすのに、彼女は全然終わらない。

学校から『未提出の宿題12個』という連絡が来た時は、さすがに何かがおかしいと確信し、いろいろと調べたところ『女の子のADHDは不注意型が多く、気付きにくい』という記事を見付け、『これだ!』との思いで医師の診察を受けたところ、ADHDと診断されました」

若い患者がTikTok見て「自分もそうかも」

ADHD(注意欠如多動性障害)は、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの症状の組み合わせが特徴だ。

生まれつきの脳の一部の機能障害によるもので、集中力が続かない、忘れ物が多い、期日が守れない、落ち着きがない、思い立ったらとっさに行動に移してしまうなどの症状が見られる。

最近はSNSでADHDの特性を紹介する動画が増え、日本でも診察に訪れる人が増えていると、六本木クリニックの院長、山田博規医師は話す。

六本木クリニック
六本木クリニック

「TikTokでADHDの特徴を見て『自分もそうかも』と友人と一緒に診察に来る若い患者もいます。

集中力がない、忘れ物が多い、仕事の期限が間に合わないといった悩みが多いです」

山田医師によると、男性は一般的に「多動型」が多く、小さい頃から授業中に歩き回るなど目に付くため早い段階での気付きがあるが、女性の場合は「不注意型」の傾向が強く、ある程度大きくなるまで見逃されることが多いという。