一度は辞意を表明したものの、7月31日に一転して続投を表明した伊東市の田久保眞紀 市長。会見では新図書館の建設反対とメガソーラー計画の白紙撤回を理由に挙げたが、首をかしげる関係者も多い。

続投理由に疑問符

伊東市の田久保眞紀 市長は市の広報誌などに「東洋大学法学部卒業」と記載しながら実際には除籍だったことがわかっていて、この問題に端を発して7月7日に辞意を表明した。

そして、同月18日には月内にも辞職する意向を明らかにしたが、自らが示した“リミット”となる同月31日に会見を開くと一転して撤回。市長職に留まることを明言した。

この記事の画像(2枚)

理由として挙げたのは新図書館の建設計画の中止と伊豆高原メガソーラー計画の白紙撤回。

田久保市長は「私に与えられた使命。全身全霊を傾けて実現したい。必ず阻止し、みなさまとの公約を実現することを約束したい」と涙ながらに力を込めたが、市議会の関係者などは首をかしげながら失笑する。

なぜなら、いずれも事実上“解決済み”の課題だからだ。

新図書館はすでに入札中止

まず、5月に行われた市長選で最大の争点となった新図書館の建設計画は、“反対派”の田久保市長が当選したことで就任翌日に入札が中止となった。

では、なぜ田久保市長の中で“終わっていない”という認識でいるのか?

それは市議会6月定例会にさかのぼる。

田久保市長は新図書館建設事業に関わる2025年度から2027年度にかけて計上した継続費について、事業費のすべてを減額する補正予算案を提出したが、当初予算通りにするという修正動議が出され、全会一致で修正案が可決された。

ただ、これは新図書館の建設計画が“復活”したことを意味するわけではない。

なぜなら、田久保市長がカットしようとした事業費には国の補助金も含まれていて、開業から80年以上が経過し、ロータリーの機能不足が長年の課題となっているJR伊東駅の駅前広場の整備などに活用できる可能性が残っていることから、市長が提案した予算案を可決してしまえば、それらの事業の停滞も招いてしまうからだ。

だからこそ、新図書館の建設に否定的な議員も含めて全員が修正案に賛成したという経緯がある。

メガソーラーは6年前から工事ストップ

一方、メガソーラー計画に関する認識にも疑問が残る。

メガソーラーといえば田久保市長が長年、建設反対運動に身を投じ、この活動に従事したことが政界進出のきっかけとなった、いわば政治活動の原点だ。

しかし、伊東市では田久保市長が初めて市議会議員に当選した年より1年前の2018年にメガソーラーの設置に関わる規制条例(伊東市美しい景観等と太陽光発電設備設置事業との調和に関する条例)を制定。

条例では、自然環境が保たれ貴重な資源と認められる地域や土砂災害が発生するおそれがある地域などについて市長が太陽光発電設備の設置事業を抑制する区域として指定できるようになっているほか、事業区域が1000平方メートル以上または総発電出力が50キロワット以上の太陽光発電設備に関しては事業に着手しようとする日の60日前までに市に届け出ることや届け出に先立って地域住民に対して説明会を実施することを義務付けた。

さらに、事業区域が抑制区域に位置する場合や1万2000平方メートル以上の太陽光発電設備は原則として市長が同意しないという条件も付けられている。

また、田久保市長が最も力を注いできた伊豆高原メガソーラー計画に関しても前市長が河川占用許可申請に対して不許可処分を下したことから2019年以降は工事が止まっている。

7月31日の会見で田久保市長は「現在、メガソーラー計画も新図書館建設計画も水面下で激しく動いている」と強調したが、現状に照らし合わせればそのような事実はほとんど見えてこない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

静岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。