松山出身の西山将貴監督が描く世界

松山市出身の西山将貴監督(26)が、愛媛を舞台に描いた映画「インビジブルハーフ」が完成し、イギリス最大のインディペンデント系映画の映画祭「レインダンス映画祭」にノミネートされた。

映画撮影に密着してから2年。愛媛に帰郷した西山監督に今の思いを聞いた。

インタビューに答える西山監督
インタビューに答える西山監督
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久しぶりの愛媛、いかがですか?

西山将貴監督:
「本当に1年ぶりだったんですけど、なかなか1年も帰ってなかった期間ってなくて。帰ってきたら松山駅がピカピカになっていて、『あれ、僕の知っている松山じゃないかも』って、ちょっと不安でしたね。でも、やっぱり愛媛に帰ってくると一番落ち着きます。」

そんな“ホーム”である愛媛を舞台に撮影されたのが「インビジブルハーフ」だ。

2023年撮影の様子
2023年撮影の様子

19歳から6年越しで完成の映画

映画は2年前の春に愛媛県内で撮影。それから編集期間を経て去年9月末に完成した。

ー「インビジブルハーフ」完成の今の気持ちは?

西山監督:
「この作品は6年ぐらい作っていたんですよ。最初にシナリオを書き始めたのが19歳の時で、本当に完成するのかなって不安を持ちながら作っていました。CGの修正も多くて、最後は一人で仕上げて、6年やっていたことが終わった時は、すごくほっとしました。」

撮影現場での西山監督
撮影現場での西山監督

イギリス映画祭ノミネートの喜び

完成した映画は今年6月、イギリス最大のインディペンデント系映画の映画祭「レインダンス映画祭」にノミネートされた。

ーイギリスの映画祭ノミネートを聞いた時は?

「こちらもほっとしたのが一番大きかったです。最初から海外の映画祭で上映される作品を目指していたので、やっと目標が叶ったという気持ちでした。イギリスで映画を撮っていた時期もあったので、また別の映画で戻ってくるのは運命的なものも感じました。」

イギリス・レインダンス映画祭での様子
イギリス・レインダンス映画祭での様子

観客からのダイレクトな反応

ー海外上映の反応は?

「すごく緊張していて、海外の人に僕たちの作ったものが響くのか不安でした。でも劇場でお客さんのリアクションが直接聞こえてきて、『この作品作れて良かったな』と思いました。

現地の方が感想を追いかけて直接言いに来てくれるなど、日本の映画祭ではあまりない体験ができてうれしかったです。」

イギリスでの様子
イギリスでの様子

ハーフの女子高生が主人公の“青春ホラー”

ー「インビジブルハーフ」はどんな作品ですか?

「ハーフの女子高生が、ある日突然謎の怪物に襲われ始める物語です。

怪物はスマートフォンに関連したモンスターで、現代テクノロジーからも逃げながら、周囲の視線や自分の葛藤と向き合う青春ホラーです。

僕自身はハーフではないですが、愛媛からどうにかして外に出られないかと悩んでいた学生時代の自分を反映した、すごくパーソナルな映画になっています。」

主人公に、10代の自分自身を重ねたと語る西山監督。ホラーでありながら、青春の痛みや成長も描かれている。

予告編のカット
予告編のカット

全編が愛媛ロケ 西山監督の地元への思い

ー愛媛で撮影することへのこだわりは?

「19歳の時に最初のシナリオを書いた時から、シーンの場所は全部愛媛の場所を書いていました。

愛媛じゃないと成立しない作品です。

地元であるからこそ、他の人が見たことのない切り取り方ができると思っていて、そのチャレンジはうまくいったと思います。」

予告編のカット
予告編のカット

松山総合公園のトンネルのシーンでは…

ー印象に残っているロケ地は?

「松山総合公園のトンネルのシーン。片側だけライトをつけてもらって幻想的な雰囲気かつ、怖さも感じてもらえるように仕上げました。

東雲高校でのシーンも印象的です。海外の映画祭でもロケーションの見せ方が評価されました。

愛媛の方にとっても新鮮さがあるのではないかと思います。」

予告編のカット
予告編のカット

地元の人たちもエキストラで出演

ー地元の人たちとの関わりは?

「本当に助けられっぱなしでした。50人以上の方にエキストラやスタッフとして参加してもらって、細部まで愛媛の皆さんに協力していただきました。皆さんの頑張っている姿が、編集期間中のモチベーションになりました。」

撮影現場で昼休憩中の様子
撮影現場で昼休憩中の様子

西山監督と愛媛、そしてこれから

1999年松山市生まれの西山監督。新田青雲中等教育学校在学中に地元・北条の海で初めて短編映画を制作した。

高校卒業後は、イギリスに渡り映画を制作。

帰国後、21歳で制作したスマートフォンで見ることを前提とした縦型映画「スマホラー!」はアジア最大級の短編映画祭のバーティカルシアター部門で最優秀賞を受賞した。

ー愛媛で生まれ育ったことが作品や感性にどう影響していますか?

「瀬戸内海や自然が多い環境で、幼少期から外で遊ぶことが多かったです。そのたびに新しいものを発見していました。

田舎生まれだからこそ色々なものに触れられて、それがものづくりの原点になっていると思います。

愛媛にいるときはあまり存在を意識していませんでしたが、東京に出た今、振り返ってみると愛媛で過ごしてきたから、映画を作る人になれているなと感じています。」

北条の海で撮った初作品
北条の海で撮った初作品

初の長編映画…今後は

ーこれからの目標は?

「初の長編映画を作りきって、当分長編映画はしんどいなと思ったんですけど、そこから半年経って、また次の長編映画をやりたいなと思っています。

できればまた愛媛で撮りたいです。」

インタビューに答える西山監督
インタビューに答える西山監督

「インビジブルハーフ」 来年春の国内公開に向けて

ー愛媛で上映したいという思いは?

「僕もプロデュース陣も上映について話し合うとき、まず愛媛どうしようというところから始まるんです。

まずは愛媛のお客さんに届けるということが、この映画の最初のミッションだと思っているので、愛媛で皆さんに見ていただけるような形で公開できるかたちで頑張っていきたいと思います。」

愛媛の皆さんへメッセージ

「この作品は全編愛媛ロケで、すべて愛媛県の景色の中で作られています。ホラー映画ですが、エンターテイメントや青春ドラマもあり、ホラーが苦手な方も楽しめる作品です。

ぜひ『インビジブルハーフ』の名前を覚えていただき、愛媛の風景や切り取り方に注目してもらえたら嬉しいです。」

来春、愛媛での公開を目指す「インビジブルハーフ」。
地元の風景と、若き監督の情熱が詰まったこの作品をぜひ劇場で体験してほしい。

『インビジブルハーフ』の名前を覚えてほしい
『インビジブルハーフ』の名前を覚えてほしい

取材後記(テレビ愛媛 鈴木瑠梨)

西山監督に密着したのは2年前。現場で見せた真っ直ぐなまなざし、同世代とは思えない落ち着き、そして作品に向き合う強い意志に圧倒された。

今回、完成した映画とともに再び話を聞き、監督の中にさらに揺るぎない自信が宿っているのを感じた。

海外映画祭へのノミネートという大きな成果を手にしても、地元・愛媛への感謝や謙虚な姿勢は変わらない。

その根底には、大街道の映画館に通い詰めていた少年時代の「映画が大好き」という純粋な思いが、今も確かに息づいていると感じる。

原点に立ち返るようにして生まれた初の長編映画。公開が待ち遠しい。

原点に立ち返るようにして生まれた初の長編映画
原点に立ち返るようにして生まれた初の長編映画
テレビ愛媛
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