富山市大沢野地区の自治振興会総会で新会長に就任した坂上誠一さん(当時55歳)は、町内会の負担軽減を掲げ、改革への決意を語った。「町内会の仕事を徹底的に減らすこと」を柱に、住民自治の最小単位とも言える町内会の今後を変えようとしている。

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「変化を恐れない」新会長の決意表明に驚きの声

「近年、町内会の運営に悩む姿をテレビや新聞でよく見る。ここ大沢野も例外ではありません」。坂上さんは就任の場で力強く語った。地元でパソコン修理店を営む坂上さんは、2年前に自治会役員を引き受けた際、行政から依頼される業務の多さに驚いたという。

「やめるには勇気がいるが続けるのは無責任でもできる」という言葉を胸に、坂上さんは「変化を恐れない」と宣言。

この斬新な姿勢に、出席した町内会長たちからは「今までにない会長でびっくりした」「当たり前を変えるところに期待している」といった反応が寄せられた。

行政の末端を担う町内会の過重負担

富山市には1415の町内会があり、小学校単位の79自治振興会、そしてそれらを束ねる連絡協議会というピラミッド構造となっている。行政からの依頼が上から下へと流れ、逆に住民の要望を下から上へと届ける重要な役割を担っているのだ。

坂上さんは「自治振興会は行政からの依頼をまとめて受け取る場所。現状はその中継所でしかなく、そのまま町内会に流しているから町内会はパンクしている」と指摘する。特に広報紙の配布、各種委員の選出、募金活動など、行政の末端業務を担う負担が大きい。

富山市が実施した町内会長向けアンケートでも、各種委員の推薦や就任、会議やイベントへの出席に負担感があるという回答が寄せられていた。

「土曜朝食会」で始まった改革の一歩

就任早々、坂上さんは「土曜朝食会」という取り組みを始めた。ファミリーレストランに町内会長を集め、ピザとドリンクバーを前に悩みを語り合う場だ。参加費は500円。

この場で町内会長たちからは「役員会をスムーズに進めたい」「引継ぎ資料が膨大で何だこれと思った」「やることがどんどん来るから考える余裕すらない」など切実な声が上がった。坂上さんの目指す「町内会の仕事を減らす」という方針に、「スリム化することに力を入れてほしい」と期待する声も聞かれた。

会話は白熱し、せっかくのピザが冷めてしまうほどだった。

本当に必要な仕事とは何か

「町内会の仕事っていったい何なんだろう...」と問いかける坂上さん。防災や超高齢化社会における町内会の役割は確かに重要だ。しかし、過去の慣例で続けられている業務も少なくない。

現在、坂上さんは市の広報紙配布などに比べ、緊急度が低い募金活動などの見直しを検討している。各業務が本当に必要なのか、「去年もやったから」という理由だけで続けるべきか、問い直す時期に来ているのだ。

住民自治の最前線で奮闘する坂上さんの改革は始まったばかり。この取り組みが町内会の未来にどのような変化をもたらすか、注目される。

富山テレビ
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