猛暑による水不足は、コメ作りに深刻な影響を及ぼしている。これからコシヒカリは稲が穂を出す出穂期を迎えるが、ダムの貯水率が低下。水は収穫まで必要になるため、農業関係者らは取水制限をするという苦渋の決断に迫られている。
「このままではゼロに…」ダム貯水率の低下
福井・越前市の水田を訪れると、青々とした稲が一面に広がっていた。コシヒカリは、間もなく穂が出る頃。実は、コメはこの出穂期に最も水を必要とする。

しかし、この水田に農業用水を供給している南越前町の桝谷ダムは現在、貯水率が例年の2割減少している。6月までは貯水率100%、つまり満杯だったが、7月に入るとどんどん水が減り、7月30日現在の貯水率は58.5%まで下がっている。
この時期の過去5年の平均貯水率は約80%で、今年は例年より2割ほど水が減少。ダムを管理責任者は「近年にこれほど下がったことはなかった」と話す。

桝谷ダム周辺の7月の降雨量は約84ミリと、平年のわずか3分の1。雨が降らない日々が続いているため、貯水率は1日2%から3%ずつ減っているという。
「このままいくと8月20日頃にはゼロになってしまう」と現場では日に日に危機感が高まっている。

最も水が必要な時期だが…取水制限
桝谷ダムなどからは、越前市や南越前町など、22の土地改良区で合わせて約5000ヘクタールの田んぼに農業用水を供給している。
ダムの貯水率が下がり、今後も回復が見込めない現状を受け、29日には土地改良区の代表が緊急で集まった。この地域ではコシヒカリの栽培が多く、これから稲の穂が出る時期を迎えるが、近年にないダムの貯水量の低下を受け、農業用水の使用制限を決めた。

日野川用水土地改良区の杉本寛重理事長は「8月5日から使用量を半分にしてほしいとお願いした。この時期に節水に協力してもらうのはおそらく初めての事」と苦渋の表情を見せる。「秋の収穫のためには今、節水しないと水がなくなる」と危機感を募らせる。

コメの収穫に向けて少なくとも8月いっぱいは田んぼに水が必要となるため、取水量を現在の半分に制限するという。

コメの品質や収量を左右する最も大切な時期を迎えながら、水不足という新たな問題に直面する農家たち。2024年から続く「令和の米騒動」に揺れる現場に、さらなる試練が訪れている。