島根・雲南市で3月下旬、飼い犬の命が奪われるケースが相次いでいることが分かった。
散歩を終えた「飼い犬」が突然死んだという連絡が相次ぎ、保健所が死因を調べている。
相次いでいる原因不明の死…愛犬を突然失った3人の飼い主に経緯を聞き、真相を探った。

散策コースになっている三刀屋川河川敷(雲南市)
散策コースになっている三刀屋川河川敷(雲南市)
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雲南市三刀屋町(みとやちょう)の三刀屋川河川敷。約2キロの桜並木が満開を迎えていた。
しかしこの美しい景色とは裏腹に、ある物騒な事案が発生していた。
この河川敷を散歩していた飼い犬が、相次いで不審死したという。

河川敷の散歩後に…相次いだ愛犬の“不審死” 原因は依然として不明

原因不明の犬の死が相次いだのは、3月21日夕方から23日朝にかけてだ。この河川敷を散歩した複数の犬が、その後体調を崩して死んでいたことがTSKの取材で分かった。

散歩後に不審死した飼い犬
散歩後に不審死した飼い犬

死んだのは飼い犬4匹、野良犬1匹の合わせて5匹。突然愛犬を失った3人の飼い主に話を聞くことができた。

川津幸寛さん:(柴犬「トラ」の飼い主)
最初は犬が死んだのはうちだけかと思っていたが、いや違うぞ、近くの犬も死んで、あそこの犬も死んで(と人から聞いて)それはおかしいなと…。

愛犬の死に不審な点を指摘する川津さん
愛犬の死に不審な点を指摘する川津さん

突然の愛犬の死に疑問を抱いた川津幸寛さん。そして陶山千尋さんと陶山佐知子さん。いずれもこの三刀屋川の河川敷周辺が愛犬との毎日の散歩コースだった。

愛犬を突然失った3人の飼い主
愛犬を突然失った3人の飼い主

異変があったのは3月21日の夕方だった。いつもの散歩コースに見慣れない“不審なもの”が落ちていたと話す。
川津さんは、現場付近を指差しながら“不審物”落ちていた当時の記憶を呼び起こした。

河川敷に“茶褐色”の不審物 慌てて愛犬を引き離すも…自宅で嘔吐

河川敷で“茶褐色”の不審物を見たと話す
河川敷で“茶褐色”の不審物を見たと話す

川津さん愛犬で、柴犬の『トラ』が立ち止まり、茶褐色のものを見つけて舐めたことから、やめさせるために慌ててリードを引っ張って引き離したと話す。

鮮明に残る当時の様子を話す川津さん
鮮明に残る当時の様子を話す川津さん

川津さんによると、散歩から帰ってきた『トラ』は突然嘔吐し、中には血も混じっていたという。その後、様子を見に行った所、横たわり既に死んでいたという。

翌日には、そのさらに数10メートル先で、陶山佐知子さんがビーグルの『殿』を散歩中に、“銀紙”のようなものが落ちているのを見つけていた。

翌日にも不審物を確認
翌日にも不審物を確認

陶山さんは、近づいた『殿』に「ダメだよっ」と声をかけて引き離したものの、散歩から自宅に戻ったあと、様子が急変したという。

陶山佐知子さんの愛犬「殿」
陶山佐知子さんの愛犬「殿」

陶山佐知子さん:
帰って1時間後からおかしくなった。下痢みたいな便をしたりした。

陶山さんは後悔の念を抱くように話した。

帰宅後に急変した「殿」の様子を語る陶山さん
帰宅後に急変した「殿」の様子を語る陶山さん

「かわいそうでしょうがなくて…」突然の死 悔やむ飼い主

柴犬「コタロー」の飼い主・陶山千尋さん
柴犬「コタロー」の飼い主・陶山千尋さん

また柴犬の『コタロー』を飼っていた陶山千尋さんも、散歩後に異変を察知。しかし「音がしたから飛んで見に行ったら、もう死んでいたんです。いつも頭に残っている。かわいそうでしょうがなくて…」と涙ぐみながら当時を振り返る。

陶山千尋さんの愛犬「コタロー」
陶山千尋さんの愛犬「コタロー」

このように愛犬との突然の別れに、いずれの飼い主も悲しみに暮れている中、連絡を受けた雲南保健所は、死んだ犬の解剖を専門の大学に依頼。死因の究明を進め、虐待や事件性が疑われる場合には、警察と対応を検討することにしている。

「コタロー」の墓に手を合わせる陶山さん
「コタロー」の墓に手を合わせる陶山さん

「相当毒性の高いもの」が人為的にまかれていたか 獣医師が指摘

散歩から帰った犬が突然死する理由について、動物病院の獣医師は「伝染病は考えにくく、偶然ということも考えにくい」と指摘する。

不審死の原因を考察する岡本院長
不審死の原因を考察する岡本院長

岡本動物病院・岡本宏之院長:
口に入れたものが河川敷にあったということであれば、たまたまそこに落ちていたというよりは、人為的にまかれていたものかもしれない。

こう話す岡本院長は「市販の除草剤やネズミ駆除などの薬剤であれば、口に入れた直後に死ぬことは考えにくい」とも指摘する。

そして「どのくらいの量を口に入れたかは分からないが、それだけで死ぬのは相当毒性が強くないとなかなかそうはならない」と話し、また「相当毒性の強い」ものが何か、すぐには見当がつかないと首をかしげる。

人為的ならば「許せない…」憤る飼い主 これ以上被害が出ないことを願う

愛犬の死は「人為的」と疑い憤る飼い主
愛犬の死は「人為的」と疑い憤る飼い主

原因は依然として分からないままだが、飼い主はいずれも「犯人がいない限りは、こんなことにはならないし、許せない」、「本当に憎い。こんなに死ぬのは普通の毒ではない」など話し、何か意図的なものを感じると憤っている。

被害が増えないよう願う陶山さん
被害が増えないよう願う陶山さん

陶山佐知子さん:
花見の時期なので、犬の散歩以外でも小さなお子さんを連れてこられる方もいらっしゃるので、これ以上被害が出ないようにいろいろなところで動いてほしい。

保健所は、死因の解明についてその目途は立っていないとしているが、愛犬を失う悲しみをさらに生まないよう原因の究明が急がれる。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

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