ところが、トランプは、基本的に「単独行動主義」です。例えば、オバマ時代の2015年に成立したイラン核合意が気に入らなかったトランプは、2018年5月離脱を宣言しました。

そのとき、イラン核合意に参加していた他の国々(イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシア、イラン)に、「一緒に離脱しようぜ」とはいわなかったのです。アメリカだけ、さっさと離脱してしまった。

「パリ協定離脱」「WHO離脱」「エルサレムをイスラエルの首都と認定」など、どれもトランプ・アメリカが単独で行っています。トランプには「皆で行うのがいい」という意識や感覚はなく、まさに「単独行動主義者」といえるでしょう。

大きな特徴「有言実行」

・有言実行、言行一致
これは、トランプの非常に大きな特徴です。

「ウソつきは泥棒の始まり」ということわざがありますが、最近は「ウソつきは政治家の始まり」という言葉も聞きます。残念ながら、日本の政治家を思い出せば、納得していただけるでしょう。

そんな中、トランプは「有言実行」「言行一致」のとても珍しい政治家です。

「有言実行」「言行一致」の例はたくさんあります。

言行一致なだけにトランプ大統領はわかりやすい?(画像:イメージ)
言行一致なだけにトランプ大統領はわかりやすい?(画像:イメージ)

「TPP離脱」「パリ協定離脱」「WHO離脱」「イラン核合意離脱」「不法移民の強制送還」「関税引き上げ」などなど。基本的にトランプは、「思ったことを話し、話したことを実行する」人です。ですから、彼の行動を予測しようとすれば、彼の話を聞くだけでいい。

「トランプは理解不能」という人がほとんどですが、私は逆に、「トランプは言行一致でとても分かりやすい」と思います。もちろん、いったことをすべて実現できるわけではありません。

例えば彼は、「24時間でウクライナ戦争を停戦させる」といいましたが、できませんでした。これは、トランプがウソをついたというより、ゼレンスキー、プーチンとの調整が必要なので、「やろうとしたができなかった」のです。

「アメリカファースト」「お金ファースト」「単独行動主義」「有言実行、言行一致」トランプには、これらの特徴があることを知っておくと、彼の動きがすっきり理解できるようになるでしょう。

『新版 日本の地政学』(育鵬社)

北野幸伯
国際関係アナリスト。著書に『プーチン最後の聖戦』、『日本人の知らない「クレムリンメソッド」世界を動かす11の原理』(ともに集英社インターナショナル)、『中国に勝つ 日本の大戦略』、『日本の地政学』(ともに育鵬社)等。

北野幸伯
北野幸伯

国際関係アナリスト。1970年生まれ。ロシアの外交官とFSB(元KGB)を養成するロシア外務省付属モスクワ国際関係大学卒業(日本人初)。ロシア・カルムイキヤ自治共和国大統領顧問、モスクワ滞在28年を経て帰国。99年メールマガジン「RPE(ロシア政治経済ジャーナル)」を発刊。現在、購読者59,669人。著書に『プーチン最後の聖戦』、『日本人の知らない「クレムリンメソッド」世界を動かす11の原理』(ともに集英社インターナショナル)、『中国に勝つ 日本の大戦略』、『日本の地政学』(ともに育鵬社)等。