完全養殖ウナギの登場も目前

人間がよかれと思ってやっていることが必ずしも生き物のためになるとは限らない、なるべくインパクトを与えない方向で人間は自然や野生動物と関わるべきだ――というのはこれまでのお話でよくわかった。とはいえ、それを実行にうつすのはなかなか難しそうだ。それならば、牛や豚と同じく、ウナギも「完全養殖」の方向に向かうのはどうだろう? 

「日本ではすでにウナギの完全養殖は可能となっています。価格も流通に耐えうるものになっていて、正確なコストはわかりませんが、従来の養殖ウナギと比べても1匹1000円も差はないと思います。まだ市場に出回っていないのは、流通のルールが定まっていないからです。

あくまで推測ですが、今年の12月にはルールが整備される可能性があり、そうなれば市場に出回るでしょう。また、これも不確実な予測ではありますが、来年にはイスラエルの企業が開発した『細胞培養によるウナギ肉』が市場に出てくるかもしれません」

シラスウナギ(画像はイメージ)
シラスウナギ(画像はイメージ)

しかし、完全養殖のウナギや代替ウナギが市場に出回るようになればウナギの数は増えていくかといえば、実際はそんなに単純な話ではない、と海部さんは言う。

「シラスウナギの漁獲量は減るとは思いますが、それですべての問題が解決するとは思えません。なぜなら、すべての養殖業者が完全養殖のシラスウナギを選ぶとは限らないからです。

たとえばマグロも完全養殖のものが販売されてはいますが、養殖業者はコストパフォーマンスを重視して、入手可能であれば天然の稚魚を選びます。完全養殖のウナギが出てきても、マグロと同じことが起こるかも知れません」