就任からまもない市長の“学歴詐称疑惑”に伊東市議会が揺れている。市長と議会側との対立が先鋭化し、ついぞ強い調査権限のある百条委員会が設置される見通しだ。
市議選最下位当選からの“下剋上”
渦中にいるのは伊東市の第21代市長・田久保眞紀 市長だ。

市議会議員を約6年務めた田久保市長は、5月25日に行われた市長選で3期目を目指した現職との一騎打ちを制して初当選。
得票数は1万4684票だった。
2年前の市議選で得票数727票の最下位当選だったことを考えれば、まさに“下剋上”といえる勝利だ。
差出人不明の文書が指摘した“学歴詐称疑惑”
ただ、就任から間もない6月初旬、19人いる市議全員に届いた1枚の文書によって不穏な空気が漂い始める。
そこには「東洋大学卒ってなんだ!彼女は中退どころか、私は除籍であったと記憶している」と記されていた。

確かに伊東市が発行する最新の広報誌には田久保市長の略歴として「平成4年 東洋大学法学部卒業」と記載され、市長選の立候補に当たり報道各社で依頼した経歴確認書にも同様の学歴が書かれている。

文書は差出人不明だったものの、市議会の一部で問題視する声が挙がったため、田久保市長は議長と副議長に対して卒業したことを示す資料を提示。
しかし、複写には応じなかったといい、その後、「証拠に基づかない“怪文書”には対応しない」との考えを明らかにした。
代表質問で追及するも疑念晴れず
このため、同月25日に行われた伊東市議会6月定例会では田久保市長に対し「議会との信頼関係を築いていかなければいけない大切な時期。学歴の証明をすることがそんなに大変なのか?あなたの言葉で聞きたい。東洋大学法学部を平成4年3月に卒業していますね?」という質問があがる。

質問した杉本一彦 市議によれば、卒業したとされる年度の東洋大学の卒業アルバムには田久保市長の名前も写真も確認されなかったという。

ところが、田久保市長は「現在、この件については“怪文書”を誰が作り、議会に送ったことも含めて代理人弁護士を通じて必要な作業に入っている。このような“怪文書”という卑怯な行為を行う人間の一定の要求を満たすことは次の怪文書や市民に対する何か圧力をかける行為の助長になる」との考えを述べた上で「この件に関してはすべて代理人弁護士に任せているので、あとのことは弁護人から公式に発言のない限りは私からの個人的な発言は控える」と答え、疑惑に対する言及を避けた。
すると、杉本市議は真偽を明らかにするため、強い調査権限があり、証言や資料の提出を理由なく拒むと罰則もある百条委員会の設置を主張。
一方、田久保市長は本会議の散会後も「議会側には必要な資料を提出している」と強調し、「疑義を申し述べる側はしっかりと根拠と添えて申し立てるべき。騒ぎ立てることで何か一定の対応をするのは怪文書を出した人の欲求を満たすことになるので応じない」と強気な姿勢を崩さなかった。
百条委設置の見通し 市長は急遽方針転換
こうした状況を重く見た市議会側は翌26日に全5会派の代表者による会議を開催。
百条委員会の設置について検討した結果、異論は出なかったといい、中島弘道 議長は「この件(学歴詐称疑惑)についてはハッキリとしてほしい」とこぼした。

百条委の設置に関する採決は早ければ7月7日に行われる予定で、賛成多数により可決となる見通しとなっている。
これに対し、田久保市長は同日夜、急遽方針転換を表明。
7月初旬にも会見を開く方針を明らかにした上で「心配をかけてよいということではないし、怪文書が元というのは非常に引っかかるが現時点で自分自身に説明できることは説明していこうと考えている」と口にした。
卒業証明書は即日発行可能
東洋大学のホームページによると田久保市長が卒業したとされる1992年の卒業生の場合、卒業証明書の発行にはコンビニエンスストアでの申し込み、オンラインでの申し込み、郵送での申し込み、窓口での申し込みが可能となっている。
発行手続きは祝休日や大学が定める休暇期間を除いて行われ、オンライン申し込みの場合は即日発行された後、郵送されるという。
田久保市長に対する疑念が晴れるのか、会見での発言が注目されている。
(テレビ静岡)