新潟県長岡市出身で2022年にドラフト3位指名を受け、千葉ロッテマリーンズに入団した田中晴也。プロ3年目の今季、着実に進化を続ける田中晴也の今に迫った。
「毎日がすごく充実している」一軍に定着しているプロ3年目
日本文理高校を卒業後、ドラフト3位でプロの世界に飛び込んだ田中晴也。6月中旬、穏やかな表情で浜風の感じるZOZOマリンスタジアムのスタンドに姿を現した。

今季で3年目を迎えたプロ生活の実感を尋ねると「より高いレベルでやるので、すごく成長も感じる。その分、足りないところもたくさんあるが、その課題と向き合って過ごせていて、毎日刺激がたくさんあるし、毎日がすごく充実しているのでそこがすごく楽しい」と充実感を口にした。
田中はプロ2年目の昨季、初めて1軍のマウンドに立ち、4試合に登板。
「投げるたびに自分の課題が明確になって、そこをつぶす時間もあって、そういった意味では経験しながらだが、すごく成長できたシーズンだったと思う」と昨季を振りかえる。
そして、今季は8試合に先発し3勝。パリーグの最下位に沈むチームの中で、入団同期の高野脩汰などともに最多タイの勝ち星を挙げている。(6月25日現在)
ただ、登板の機会が増えるにつれて同じ対戦相手に投げることも増える。今季はそこに新たな難しさを感じているという。
「やはり対戦しているのでデータもあるし、投げるたびに抑えたら抑えたで対策されるし、打たれたら打たれたときのことを相手はもう一回やろうと思うだろうし、技術も大事だが、その上で色々対策されていると感じる部分もあるので、そこをもう少し柔軟に対応しないといけないと思っている」
甲子園に2年連続出場も初戦敗退
一流プレーヤーへの道を順調に歩む田中だが、その原動力の一つは高校時代に味わった悔しさだ。

田中は日本文理高校時代に2年連続でエースとして甲子園に出場。2年生の夏は福井県代表・敦賀気比を相手に8回を投げて被安打15、8失点を喫し、6-8で初戦敗退した。
敗退後、田中は「個人としても悔しい気持ちでいっぱい。この気持ちを晴らすことができるのは、本当にこの甲子園球場という舞台しかない。また来年帰ってこられるようにやっていきたい」と話していた。
この言葉通り、翌年も田中の姿は甲子園のマウンドにあった。
迎えた甲子園初戦の長崎県代表・海星戦。前評判も高かった田中だが、試合の途中で右手の人差し指のマメがつぶれるアクシデントに見舞われ、思うような投球ができず、6回で降板。
田中は、9回裏2死で打席に立つも、空振り三振に倒れ、0-11の完封負けで最後の夏を終えた。
田中は「全国のレベルの高さを知ったというのもあるし、そういった意味でより高いレベルで野球をしたかったので、プロに入る選択を高校卒業後にした」と当時の決断を振り返る。
さらなる高みを目指して進んだプロの世界。その覚悟は口に出さずとも周囲に伝わっている。
田中の2歳年上、中森俊介は「普段、練習中とかはすごくまじめだし、熱心に取り組んでいるのは端から見ていても思う。自分もすごく刺激を受けるところはある」と話す。
田中の1歳年下の木村優人も「一言でいうと、真面目な人」と田中を表現した。
グラウンドの外では意外な面も
プロ意識の高さがうかがえる田中だが、取材をしていると、若者らしい一面ものぞかせた。

最近ハマっていることを尋ねると「アサイーボウルを食べたりしている」と笑顔で答えてくれた。時間を見つけてサウナも楽しむのもお気に入りのリラックス法の一つだという。
真面目な性格もグラウンドの外では意外な一面も。
木村は「晴也さんとはとても仲良くさせてもらっている。見た目は真面目な人だが、少し人をいじる部分、ふざける一面もある」と話す。
また、中森は「飼い犬のリードを放してしまっている人がいて、犬が追いかけてきたが、晴也が僕を盾にして逃げようとした。そういう一面もあるのでかわいい後輩」と、アメリカで行った自主トレ時のエピソードを教えてくれた。
田中は、先輩からも後輩からも好かれ、プロの世界にすっかり馴染んでいるようだ。
努力の結実自己最速を更新した成長の7イニングピッチング
そんな田中投手の成長が大きく表れたのが、4月16日の日本ハム戦との一戦だ。

序盤からリズムをつくり、4回まで相手に安打を許さない投球を見せると、5回には安打や四球などで2死満塁のピンチを招くが、自己最速となる156キロのストレートで空振り三振を奪い、ピンチを脱した。
田中は「良いが球いったなとは思ったが、156キロと見てびっくり」と渾身の一球を振り返った。
この日、一軍で初めて7回を投げて被安打2、無失点で今季初勝利を手にした。
試合後のお立ち台では、「勝ててホッとしている。チームのリーグ優勝、日本一に向けて自分が持っているものを全部出して、チームに貢献できるようにこれからも頑張っていきたい」と語った。
「開幕投手になってほしい」ファンからの大きな期待
田中の活躍に惹かれるファンも増えている。

取材した日は、田中の登板日ではなかったが、背番号35のユニフォームを来たファンの姿が複数見られた。
そのファンからは「超かっこいい。本当に投げている時の表情とチームメイトといる時の表情が全然違ってちょっと心惹かれる」「めっちゃ応援している。若くて投げられるし、打てるし、エースになってほしい」「開幕投手になってほしい」「恐れずに投げ込むストレート。あの強さがいい」など絶賛する声が並んだ。
着実な姿勢の先にある大きな目標
将来の千葉ロッテのエース候補としての期待も背負う田中。

今季の目標を聞くと「今年1年間、まずケガなく一軍で完走するというのが一番ベースの目標ではある。毎試合安定したピッチングをして、まずは1年間、一軍という舞台で活躍できるように頑張りたいと思っている」と語った。
インタビュー中、受け答えの随所に感じられたのは、堅実な姿勢だった。
そのワケを聞いてみると「身近な目標というか手前の目標からクリアしていかないと、大きい目標だけ見過ぎていてもうまくいかないと思うので。まずは目先じゃないが、小さな事も大切にやると言うことはすごく大切だと思うので意識している」と話してくれた。
目の前のことを大事にしつつ、その先の目標もしっかりと見据えている21歳。
「まずはケガをせずに一軍で活躍し続けるのは最低限の目標。その先に2桁勝利、新人王というのが狙っている数字・タイトルでもあるので、そこは頑張っていきたい。メジャーリーグは目指しているし、日本代表も目指しているので、とにかく成績を残して、より高いレベル、世界で戦えるように頑張りたい」
目標を語った話しぶりは淡々としていたが、その眼差しからは覚悟が感じられた。将来有望な若き右腕の今後に期待は膨らむばかりだ。
(NST新潟総合テレビ)