福島県裏磐梯地域に広がる静かな湖沼群。その中のひとつ、名もなき小さな沼で奇妙な現象が起きている。早朝のみ水面に現れる謎の渦。偶然この不思議な光景を目撃したサイクリストの投稿から始まった「裏磐梯ミステリー」の調査が進められた。

「恐竜がいる!?」SNSで広がる憶測

この現象を最初に報告したのは、ロードバイクで朝のトレーニングを行っていたTOSSYさん。投稿した渦巻く沼の写真は瞬く間に話題となり、「秘密基地から何か飛び出す?」「恐竜がいる!?」といった様々な憶測が飛び交った。

SNSに投稿された画像 渦を巻いているように見える
SNSに投稿された画像 渦を巻いているように見える
この記事の画像(7枚)

沼の位置は福島県北塩原村のバス停「秋元湖入口」近く。周辺には諸橋近代美術館があるが、沼自体は地図にも名前が記されていない小さな水域だ。

不思議な現象は名もなき小さな沼で起きていた
不思議な現象は名もなき小さな沼で起きていた

TOSSYさんによると、「ロードバイクの朝練を再開した4月から渦が出現している」という。さらに興味深いのは、「早朝5時頃にいつも渦巻いていて、日中には渦が消えている」という点だ。この時間帯による現象の変化が、ミステリーにさらなる深みを与えている。

現地調査でわかった水面の謎

6月13日早朝4時半、福島テレビの取材班が現地に向かった。裏磐梯は風も弱く静かな朝を迎えていた。

情報をもとに取材班が向かうと…
情報をもとに取材班が向かうと…

渦巻きは確認できなかったものの、水面をよく観察すると魚の群れのような波紋が見え、さらに白いものが水面に漂っていることが確認された。この白いものは何なのか?また、なぜ早朝だけに渦が発生するのか?

あらゆる可能性 専門家の見解

謎解明のため、地元で活動する裏磐梯エコツーリズム協会に水面の白い物体について尋ねると、「シロヤナギの花粉が飛んでいて、それが水面に漂い渦を巻いている可能性がある」との見解が示された。
また、魚や生物の動きで渦が発生しているのではないかという仮説も検討されたが、協会は「魚や生物は生息しているが、渦を巻くほどの動きはない」と否定的だった。

裏磐梯エコツーリズム協会の見解
裏磐梯エコツーリズム協会の見解

別の仮説として、「沼の下に他の沼とつながる穴が開いていて、そこの上で渦が発生しているのではないか」という可能性も挙がった。この沼は近くの甲府沼と地下でつながっているという情報もあるが、エコツーリズム協会によれば「それで渦を巻く可能性は低い」とのことだった。

「水温差」が鍵を握る?科学的な仮説

こうした状況を受け、日本大学工学部の手塚公裕准教授は科学的観点から興味深い仮説を提示した。
「朝は放射冷却で最も気温が下がる時間帯です。そうすると水面が冷やされます。一方で、湖の下の地面は地熱であたたかい。地面の方があたたかくて、水面の表面は冷たく重たい。そうすると冷たく重たい水が下に行って渦を巻くのではないか」

手塚准教授の見解
手塚准教授の見解

手塚准教授はこの説明を「あくまで仮説」と断っているが、早朝限定で渦が発生する現象を説明する上で説得力のある見解だ。

情報求む「裏磐梯ミステリー」

名もなき小さな沼に起きる不思議な現象。早朝にだけ姿を現す渦の正体は何なのか。完全な解明を待ちながら、裏磐梯の自然が見せるこの神秘的な光景は、多くの人々の興味を引き続けるだろう。

引き続き情報を求める
引き続き情報を求める

沼の渦は、シロヤナギの花粉や水温差によって起きている可能性が高いという見方が示されたが、完全な解明には至っていない。福島テレビの取材チームは今後も調査を続ける予定だ。

(福島テレビ)

福島テレビ
福島テレビ

福島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。