かつて秋田杉の木材加工で栄え「木都」と呼ばれた秋田・能代市。このまちで木工職人になった男性がいる。海外で様々な職業を経験した末にたどり着いた秋田杉の魅力。様々なアイデアを形にして秋田杉のぬくもりを届ける。

海外経験を経て古里・能代市へ

木材関係の会社が集まる能代市河戸川の一画にある1軒の工房「AAREA(エリア)」。

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オーダーメイドの家具から雑貨や小物まで様々な木工製品を製作しているこの工房は、小林孝生さんが1人で経営している。

能代市で生まれ育った小林さんは、高校を卒業後、当時秋田市雄和にあったミネソタ州立大学機構秋田校に進学した。そこで貿易について学ぶと海外に渡って様々な仕事を経験し、2009年に古里に戻ってきた。

「木都」と呼ばれている古里・能代。小林さんは「秋田に戻ってくるタイミングで『海外に売れるものはないかな』と、突拍子のない話ではあったが製材店に行った。そのとき他の場所では考えられないくらいのクオリティーと価格の商品があり、それを他のところに仲介したいと思い、始めようと思った」と工房を始めるきっかけを語った。

匂い・手触りは“良” 加工は“難”

進むべき道が見えてきた小林さんは、能代市内の製材会社や木工所を訪ねて木材加工の腕を磨いた。そして、木について学ぶ中で出会ったのが“秋田杉”だ。

秋田杉の魅力を様々な形にして発信している小林さん。
秋田杉の魅力を様々な形にして発信している小林さん。

小林さんは「一番は匂いや手触りが良いこと。手触りが軟らかいと“調湿”という水分を吸ったり吐いたりしてくれる機能が優れているので、その部分がすごく良い」と秋田杉の魅力を語る。

2011年に秋田市に工房を構えた小林さんだったが、能代市内に物件が見つかり、2014年からは念願だった古里に木工製作の拠点を移した。

秋田杉の加工は難しく、オープンしてしばらくは苦労が絶えなかったという。

小林さんが「加工が難しい」と話す秋田杉で作られたペン
小林さんが「加工が難しい」と話す秋田杉で作られたペン

AAREA・小林孝生さん:
秋田杉を扱うのは、軟らかい木なので簡単そうに見える。軟らかい木と硬い木があると硬い木のほうが切りにくく、軟らかい木のほうがサクサク作れそうなイメージはあるが、やりだすと秋田杉は難しい。

一押しは“アロマオイル”多彩な商品展開

AAREAではオーダーメイドの家具も作っているが、秋田杉に魅了された小林さんの一押しは、秋田杉の葉から抽出したオイルを使ったアロマオイル「Sugi no kaori」だ。

秋田杉の香りをそのまま生かした「スギ」、柑橘系の香料をブレンドした「フレッシュ」、バニラと混ぜた「ハッピー」の3種類の香りがある。秋田杉で作った容器はアロマディフューザーとして利用することもできる。

秋田杉で作られた名刺
秋田杉で作られた名刺

他にもスギを使った木の名刺や木目をデザインに生かした時計など、加工の難しさを感じさせない多くの製品を展開している。

さらに小林さんは、能代市の成人式の記念品も手がけている。

2024年の能代市の成人式で贈られたトレイ
2024年の能代市の成人式で贈られたトレイ

2024年は秋田杉のトレイを作り、二十歳の節目を迎えた若者たちに贈った。成人式の対象者に「何が欲しいか」を聞き、何個か候補をもらって予算内でできるクオリティーのもの、納期までに納められる製品を作ったという。

次は“額”に特化した部門つくりたい

想像力と行動力で新しい発信を続ける小林さん。最近はフレームの注文が増えていることから「額に特化したフレームの部門をつくりたい」と意気込む。

最近注文が増えているという秋田杉のフレーム
最近注文が増えているという秋田杉のフレーム

「秋田杉の額は軟らかそうに見えるが、一度飾ってしまうと触ることのないもの。他の木よりも軽いので合ってるのかな」と製作意欲を膨らませている。

小林さんは、これからも自身が温めたアイデアを形にして、秋田杉のぬくもりを多くの人に届ける。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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