1985年生まれが40歳を迎え、理想の働き方として専門職志向が管理職志向を上回った。年収の現実は想定より低く、スキルとしてはコミュニケーション力が重視される。専門家は、人間ならではの「構想力・共感力・変革力」が、これからの働き方の中核になると指摘する。
働く40歳が求めるのは安定よりも専門性
科学万博が開催され、NTTが誕生した1985年に生まれた人たちが、今年40歳を迎える。“働き盛り”の40歳の理想の働き方とは。

さまざまな転機が訪れる40歳の働く人たちに、教育や人材事業などを手掛けるヒューマンホールディングスがキャリアの実態と、「なりたい自分」を聞いた。
対象:1985年生まれの男女1000人
期間:2025年5月19日~20日
方法:インターネット

仕事の悩みは、将来のキャリアが見えない(16.8%)、仕事量が多い(20.1%)、昇給が見込めない(22.5%)、モチベーションが上がらない(22.9%)などが並ぶ中、最も多かったのが「給与が低い」で35.6%となった。

20代の時に想定していた40歳時点の年収で最も多かったのは、500万円から600万円未満の25.8%だったが、実際の年収は300万円から400万円未満が21.9%と最多となった。

1985年生まれの「なりたい自分」を聞いたところ、管理職、どちらかといえば管理職が26.0%である一方、管理職よりも専門分野を持つスペシャリストを目指す人が74.0%と多くなっている。

40歳までに習得しておくべきだと思うスキルでは、「コミュニケーション」という答えが33.9%で最も多く、デジタル・IT(30.7%)や語学(21.4%)、AIやIoT(20.6%)、問題解決(19.6%)などが続いている。

「不惑」という節目に対する、働く人の本音を街で聞いた。
スペシャリスト志向の専門商社(20代):
どちらかというとスペシャリスト。自分の武器を持った方が強くなるかなと。何か一つでも得意分野があると、これが得意と言える。一つでもあるかないかは大きい。
管理職志向の専門商社(20代):
やっぱり管理職になりたい。給料が高いというのと、働きがいが管理職の方がある。上の立場に立って、人をマネジメントしたいというのがあるので。自分が指示されるよりは、管理職のサイドに立って、会社を回す側が自分にとっての働きがい。
専門商社(20代):
常に迷っている状態。自分の周りにスペシャリストの方もいれば管理職の方もいるが、自分のプライベートの充実を考えたときに、忙しくしている人もいて。自分自身がどうなりたいかが、なかなか考えられてない。
スペシャリスト・金融関係(40代):
独立してちゃんと営業の専門職に特化すれば、自分で客も選べるし、ベストを尽くせることも上司の承認とか待たずにできるので。自分が30代の時に、40代ぐらいの管理職の人が人間関係で辛そうだったんで。それをやるために働いたわけでもないと思い、違う道を選ぼうと。
管理職・専門商社(50代)
いま管理職だが、正直なりたくなかった。でも、なってみて良かった点もあるので、経験としては良かった。今の時代、なりたくない人が多いと思うが、なってみるというのも悪くない。
30代ぐらい、色んなことが仕事も含めても分かり出した時期に、責任のある仕事や人をまとめる仕事の経験ができると、もっと視野は広がっていたと思うので、もっといろんなことが学べたのかなというのは少なからずある。
AI時代に求められる「人が導く力」
「Live News α」では、デロイトトーマツグループの松江英夫さんに話を聞いた。
海老原優香 キャスター:
働き方について、さまざまな声を聞かれましたね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
管理職になりたくないという人が、結構多いですよね。管理職のあり方自体を変えていく時代に来ていると思います。
AIが進んでいくと、既存のルールややり方を管理する仕事がどんどん減っていって、新しい価値を生み出していくマネジメントが、ますます重要になると思います。

AIを活用した人の意識調査では、「管理職は今ほど必要なくなる」と考える人の割合は、AIを利用している層では39%だったのに対し、AIを利用していない層では32%に留まりました。
また、「人にしかできないことが重要になる」と回答した人は、AI利用者で61%、非利用者では46%となり、活用した人はそうじゃない人に比べて、管理職は今ほど必要なくなるという話や、人にしかできないようなことが、より重要になってくるといった回答の割合が高いという特徴があります。
※出所:リクルートマネジメントソリューションズ「生成AIと学びの環境に関する調査」(2025年)
海老原キャスター:
AI時代ならではの、マネジメントが重要なんですね。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
そうなんです。マネジメントというと、一部の経営者やマネジメント職という職種を想像しがちですが、これから時代は様変わりすると思います。
これからは、どんな職種においても、マネジメントする力は、まさに人しかできない業務の極みなので、ますます重要になり、いわば、スペシャリスト志向の方にとってもマネジメント能力が重要になっていきます。
給料がなかなか上がらないという話がありましたが、給料を上げていく上でも、自分の仕事を人しかできない仕事にシフトしていくためのマネジメント能力が、ますます重要になってくるでしょう。
未来を描き共感し変える力が仕事の価値を高める
海老原キャスター:
どういったことが、重要になっていくんでしょうか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
人しかできないマネジメント能力を高めるためには、3つの力を磨くことです。1つはまず、「構想力」です。今やっている自分の仕事とか自分のビジネスが、この先々どんな姿になっているかという未来を描く力を養うということです。
そして、「共感力」です。コミュニケーション能力を磨きたいという回答が多かったですが、さらに一歩進めて、人と人が共感できる力を身につけていくと、多くの人をモチベートしたり、チームをもっと盛り上げたりという仕事ができる。これは、人間しかできない力なので、大きなポイントになります。
海老原キャスター:
そして、3つ目が「変革力」ですね。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
時代が変わる中で、今の仕事を変えていって、判断して、行動に移せる力が大事です。AIが進化していくと、AIに使われるんじゃなくて、自らが使う側にもあることが非常に大事だと思います。
この3つの力を身につけることによって、あらゆる職種の中でも、自分の仕事を付加価値高いところにマネージしていく、それによって給料も上がるし、自分もハッピーになるという展開に期待したいです。
海老原キャスター:
実際の経験に裏打ちされた上司の言葉や判断は、周囲からの尊敬や信頼を生み、一緒に働きたいという意欲ややりがいにもつながりますよね。人だからこそできる導く力、これからも変わらず大切にされていきそうです。
(「Live News α」6月6日放送分より)