本にセロハンテープで思わぬ注意点
皆さんは読書をしているとき、誤って本のページを破ってしまった経験はあるだろうか。紙の書籍はデリケートなところがあり、扱い方によっては劣化や破損してしまうこともある。
編集部でも以前、本をアルコール消毒する行為が劣化につながることを取り上げている。
(参考記事:「図書館の本をアルコールや日光で消毒しないで」投稿が話題…利用者がするべき感染予防を協会に聞いた)
さらに、物品を補修するときに使われることもある「セロハンテープ」にも、そうした危険性が潜んでいるというのだ。今、Twitterで注意喚起が呼びかけられ、話題となっている。
【定期】
— 規文堂 (@kibundo_kyoto) September 17, 2020
図書館で借りた本は、セロハンテープで直してはいけません。
経年劣化で大変なことになります・・・。
ページヘルパーという、図書館のために開発された劣化しない補修用品を使います。
本が破れたら自分で直そうとせず、正直に図書館に持っていきましょう・・・! pic.twitter.com/Gxj0cRXRcp
【定期】
図書館で借りた本は、セロハンテープで直してはいけません。
経年劣化で大変なことになります・・・。
ページヘルパーという、図書館のために開発された劣化しない補修用品を使います。
本が破れたら自分で直そうとせず、正直に図書館に持っていきましょう・・・!
このように呼びかけたのは、図書館向けの用品・家具などを製造販売する企業「規文堂」の公式アカウント(@kibundo_kyoto)。セロハンテープで本を補修してはいけないこと、図書館から借りた本が万一破れたら、正直に申し出るように訴えている。
この投稿は共感を集め、図書館に関係するTwitterユーザーからは「セロハンテープが貼ってあると、剥がす手間から大変な作業ですし、本が傷むのが悲しい」などという声も寄せられている。
セロハンテープは手軽なこともあり、紙が破れると補修したくなる気持ちも分かるが、やはり本に貼る人は多いのだろうか。そして経年劣化すると、どんな影響が出るのだろう。
注意喚起の投稿をした、規文堂の担当者に気になることを聞いてみた。
以前から図書館の現場で困っていた
ーーTwitterで注意喚起をした理由は?
企業活動の一環で、図書館の現場での困りごとを探しているのですが、SNSでは以前から、司書の人が「セロハンテープの処理が大変だった」という声をあげていました。セロハンテープが開発された当初から、こうしたことはあったと思われますので、定期的に注意喚起したいと、今回初めて投稿しました。投稿にも「セロハンテープを丁寧にはがしてから補修に入るため、かえって二度手間になる」といったコメントが多数寄せられています。
ーーセロハンテープで補修する人がいるのはなぜ?
図書館の本はあまりに破損がひどいと弁償になることもあるので、自分で何とか直してしまおうという心理が働くのかなと思います。司書の方も気付いたら剥がすそうですが、紙が破れないように剥がすのはかなり気を遣うそうです。海外では、紀元前後の古文書である「死海文書」がセロハンテープで補修され、劣化してしまった事例もあります。
最悪の場合読めなくなることも
ーーセロハンテープで補修してはいけない理由は?
セロハンテープは長期保存を前提としたものではないからです。経年劣化により変色・変形し、かえって書籍を傷めてしまいます。保存状態などもあるので確定的なことは言えませんが、個人的には、貼られてから5年~10年もすればボロボロになってしまう印象があります。
ーーセロハンテープで補修するとなぜ劣化する?
テープには基材(つるつるした部分)と粘着剤の部分がありますが、セロハンテープは陽に当たるなどして経年劣化すると、基材が変形したり、粘着剤が変色したりします。基材が変形すると紙が引っ張られて傷みますし、粘着剤が紙に染み出すと、紙が黄色くなったり、別のページとくっつくこともあります。
最悪の場合は文字が読めなくなったり、内容の識別ができなくなることも考えらえます。いずれも書籍を痛める原因となります。
「ページヘルパー」って何?
ーー投稿で紹介した、ページヘルパーとは?
ページヘルパーは書籍の補修に向けて開発された製品です。基材には経年劣化しにくいポリエステルフィルムを、粘着剤には耐熱性、耐候性に優れる、アクリル系を使用しています。明確な数字は申し上げられませんが、セロハンテープよりは非常に長い、耐用年数があります。
ーー本の補修で気を付けるべきことはある?
書籍に使われる紙の種類によっては、ページヘルパーでも補修に不適切となる場合があります。特に古い書籍については注意が必要です。ページヘルパーは現代における通常の書籍への使用を想定しているので、和紙など従前の印刷技術が使われた書籍に使う場合は注意が必要です。
また、補修とは少し違いますが、本に付箋を貼るのも良くありません。のりの部分が残ってしまい、セロハンテープと同様に劣化の原因となります。
図書館の本は自分で直そうとしないで
ーー図書館の本が破れたときはどうすればいい?
紙の種類によって対処が異なるため、自分で直そうとせず、図書館の窓口に正直に申し出てほしいと思います。今回の注意喚起の投稿には、過去に申し出たことで怒られたという反応もありましたが、お礼を言われることもあると思います。
本は財産なので、図書館と利用者がお互いに正直に言えるような関係が形成できればと思います。
ーー本を良い状態で保存できる環境は?
本は紫外線や湿気で劣化するので、陽の光が直接当たらない、冷暗所のような場所で保存することを勧めます。紫外線を含む照明が近くにあると、化学変化の要因になる可能性があるので、照明を取り付ける場合はLEDを勧めます。
また、湿度管理も重要です。湿気が高くなると本にカビが生えたり、結露で水滴がついてしまうこともあるので、貴重書は木製の書架(本棚)や桐箱で保存するとよいでしょう。
ーー個人所有の本を補修する手段はある?
紙の種類でさまざまですが、貴重書だと、基材の部分に和紙、粘着剤の部分をでんぷんのりを使って補修することがあります。なぜこうするかというと、和紙とでんぷんは水で溶かせるので、必要に応じて修理前の状態に戻すことができるためです。
図書館だとこの方法で補修することもありますが、個人でも同じように補修する人もいます。
破れた本をセロハンテープで補修すると、剥がすのに苦労するだけではなく、本自体がだめになることもあるようだ。図書館から借りた本を破いてしまったときは、正直に申し出てほしい。
また、ページヘルパーは規文堂を含め、複数のメーカーから発売されている。個人所有の本を補修するときも安易にセロハンテープを使わず、こちらの使用を検討してもいいかもしれない。
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