大人気の銘菓、長野県伊那市の老舗菓子店の「伊那のまゆ」。60年以上前に発売された菓子だが、SNSをきっかけに爆発的に売れている。店頭では行列ができ、オンラインショップを休止する事態に。店も「創業以来初めて」と話していて、うれしい悲鳴をあげている。

開店前に行列 老舗店の菓子が爆売れ

伊那市の老舗「越後屋菓子店」。午前9時の開店を前に5人ほどが列を作っていた。

「伊那のまゆの5個入り1つと10個入り3つと15個入り1つをください」

客が次々と購入していったのは銘菓「伊那のまゆ」。ホイップクリームが入ったもなかをチョコレートでコーティングしたお菓子だ。

「越後屋菓子店」(長野県伊那市)
「越後屋菓子店」(長野県伊那市)
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地元では、土産品などとしてもともと人気だったが、2025年に入り爆発的に売れている。

客は 「この前は10時くらいでもうないということで、お店が閉まっていたので、きょうはちょっと早めに来ました」と話した。

越後屋菓子店 5代目社長・竹村裕さん
越後屋菓子店 5代目社長・竹村裕さん

越後屋菓子店5代目 竹村裕社長は「(一時は)店開けるときに20人以上並んでいたんですけど、そういうことも初めてですね、創業以来。なんだこの列はという感じで」と話し、驚いている。

 なぜ、こんなに売れているのか?

「珍しいお菓子を」1960年ごろ開発

越後屋は1882(明治15)年創業。当初はようかんや大福といった和菓子を扱っていた。

「伊那のまゆ」は1960年ごろ、4代目の竹村新太郎さんがかつて養蚕業が盛んだった伊那市の歴史から着想を得て開発したそうだ。

資料 養蚕の繭
資料 養蚕の繭

裕さんによると、「どこにでも売っているお菓子を売っていてもしょうがない、珍しいお菓子をと『伊那のまゆ』というお菓子を考えて売るようになった」という。

以来発売から60年以上、地元から愛されるお菓子になった。

今も5代目の裕さんと2人の息子が作り続けている。

裕さんは「他にないお菓子ってよく言われますね。お土産に喜んでもらっている」という。

作り方は昔とほとんど変わっていない。

自家製のホイップクリームを「まゆ」の形に似たもなかで挟み、バランスを考え、ビターな味わいのチョコレートでコーティング。 10分ほど冷蔵庫で冷やせば完成だ。

購入した客
購入した客

購入した人は、 「いただきます。おいしい!うわ、うまい!」 「甘すぎない!これはあまり(他に)ないね」とほおばっていた。

インフルエンサーの投稿で爆発的人気に

もともと人気だった「伊那のまゆ」だが、爆発的に売れ始めたのは2025年5月ごろから。

裕さんによると、「SNS、TikTokやX(旧ツイッター)に載ったら、ワッと注文が来た」という。突然で驚き、「あれあれ、どうしたんだろうと思ったら、知り合いからメールが来て『載っていたよ』と」聞いたという。4月下旬ごろに「インフルエンサー」がSNSに投稿、その後、他の人たちも次々と投稿していたことが分かった。

SNSに投稿された「伊那のまゆ」
SNSに投稿された「伊那のまゆ」

なぜ、インフルエンサーが注目したのかは分からないということだが、店だけでなくオンラインショップでも注文が殺到。売り上げは4倍以上となった。

オンラインショップでの販売休止

1つ1つ手作りのため限界があり、今はオンラインショップでの販売を休止している。

裕さんは「6月7月って1年で一番暇な時期なんですよね。この時期にこんなに売れるなんて思いもしないで。まあ大変でね、いろいろなものが品切れになって、あたふたしている」と話した。

オンラインショップも売り切れ(2025年7月)
オンラインショップも売り切れ(2025年7月)

店での販売も1人50個までと制限している。

※9月12日より1個180円に価格改定

「創業以来初の事態」店はうれしい悲鳴

取材したこの日も県の内外から次々と客が訪れていた。

市内から来た客は「(買えて)うれしいです。おいしそうだったので、食べるのも楽しみです」とほほ笑んだ。

名古屋から訪れた客は 「有名すぎてネットで買えないというので、現地(店舗)に来て、実際に買えるか不安だったので良かったです」と購入でき安心していた。

現在は越後屋のほか、東京の銀座NAGANO、駒ヶ根市のショッピングセンター「ベルシャイン駒ヶ根店」で購入可能となっている。

「伊那のまゆ」 越後屋菓子店(定休日 水・木曜日)
「伊那のまゆ」 越後屋菓子店(定休日 水・木曜日)

裕さんは 「うれしい反面、労働時間も長くなってしまので、もう少し落ち着いてくれるとちょうどいいかな(笑)」と述べた。

「伊那のまゆ」が売れ過ぎるという「創業以来初の事態」となった越後屋。

店もうれしい悲鳴をあげている。

裕さんは「今のところ買いたい人に買ってもらえていないので、そこが申し訳ない部分。昔から日本中こんなお菓子はないとよく言われる。多くの人に楽しんでもらえればうれしい」と語った。

(長野放送)

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