図書館の「本の消毒」が話題

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの図書館が休館中となっていたが、39県で緊急事態宣言が解除されたことを受け、再開する図書館も出てきている。

そのような中、図書館の本について「借りた本にアルコールをかけたり、日光にあてて消毒しようとすると本が劣化してしまうので、しないでほしい」という呼びかけがTwitterに投稿され、話題となっている。

投稿には「完全に開館したら、紙がボロボロになりそうな予感でしかないです」「アルコール消毒は自分の手だけにして!」という賛同の声がある中、やはり「本が感染源になりそうで怖い」との声もあった。

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多くの市民が利用する公共施設の図書館。不特定多数が触れる本からの感染リスクは気になるし、まず消毒してから読みたい、と思う気持ちもわかる。

紫外線を使った「殺菌ボックス」が設置されている図書館もあるが、そういった設備のない図書館を利用する際は、このような消毒をするかわりに、どんなことに気を付ければ良いのだろうか。

日本図書館協会にお話を聞いた。

本からの感染予防には「手洗い」を推奨

――借りた本を「太陽光にあてる」「アルコール消毒する」というのはNGなの?

太陽光に長時間あてることは、変色など本の劣化につながる可能性があります。

アルコール消毒に関しては、専用の薬剤等を使用して図書館側で行うことはありますが、一般の方がやり方を間違えると本を傷める可能性につながると思います。


――実際にこのようなことをしてしまう利用者は多い?

そうした事例は聞いておりませんが、現在の状況を反映したものかもしれません。


日本図書館協会によると、本をフィルムコーティングすることでアルコール消毒ができるようになり、実際に図書館でもそのような処理は行っているというが、利用者が間違ったやり方でアルコールの散布などをしてしまうと、本の劣化につながってしまうというのは事実だという。

安易なアルコール消毒はNG(イメージ)
安易なアルコール消毒はNG(イメージ)

――図書館ではどのような衛生管理をしている?

本の種類にもよりますがフィルムコーティングするのが一般的で、ある程度の除菌効果と表面をアルコール等で拭き取ることが可能となります。

「殺菌ボックス」の設置に関しては、特に規準があるわけではありません。各図書館での状況に応じた判断となります。


――では、図書館で借りた本を読む前に、利用者ができる感染症対策はある?

本を読む前と読んだ後に、手を洗う。読んでいるときに、顔などを触らないことが大切です。


代わりにできるのは、本を読む前と後の手洗い。すでに外出後の手洗いやうがいを徹底して行っている人が多いだろうが、本そのものの消毒は専門家にお任せして、本に触れる前後にしっかりと自分の手のウイルスを洗い落とすことが、感染予防の一番の策になるというのだ。

図書館の感染予防ガイドラインを作成

では再開に向けて、図書館は今後、どのような対策を行っていくのだろうか。

日本図書館協会は、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で示されたガイドライン作成の求めをふまえ、「図書館における新型コロナウイルス感染症拡大予防ガイドライン」を5月14日に作成。

例えば、資料へのウイルス付着に関係する対策については

・オーストリア図書館協会等をはじめとする海外の関係団体が公表している情報において、返却後の資料を一定期間保管・隔離したり、返却そのものを延期したりすることを推奨する例が見られるため、これらを参考にすることが考えられる。

・書架等で閲覧した資料を直接書架に戻さず、返却台に置くよう求めるなどの注意喚起を利用者に対して徹底し、他の利用者や従事者の接触を防ぐ。

などとしている。

また、咳エチケット、マスク着用、手洗い・手指の消毒の徹底や、換気の実施、サービスカウンターの定期的な拭き取り消毒などに加え、

・時間制来館者システムの導入
・入館可能時間、入館可能者数の設定(入館の順番待ちの列を整える)
・閲覧スペースの座席数の制限等(椅子の数を減らして間隔を空けたり、互い違いに着席するなど)
・集団での来館の制限等


などの対策を取り、また、特定警戒都道府県内にある図書館は、

・より厳しい入館者の人数制限の実施
・完全オンライン予約制の導入


など、知事からの要請等に留意し、館内外における過密解消、感染拡大防止に向けて必要な対応を取るとしている。


外出自粛の生活で「自宅で読書」をと、図書館の再開に期待を寄せている人は多いはず。
これまで通りの“3密”を避ける行動や、手洗い・うがいなどの基本的な感染対策を一人一人が怠らないことはもちろんだが、不特定多数の人が集まる場所を安心して利用するには新たなガイドラインが必要とされているのは確かだ。
 

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プライムオンライン編集部
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