温暖化で海の生き物に変化がみられるが、広島市の干潟では、減っているアサリなどの生態系を知ってもらおうと、親子で干潟を掘ってアサリをみつけるイベントが開かれた。
海水温上昇でアサリを餌にする魚が滞留
広島市西区の商工センターの干潟に50人の親子が集まり、砂を掘ってアサリを探すイベントが行われた。

子どもたちは、カニなどの小さな生き物を見つけるたびに歓声を上げていた。

この場所で育てられているのは、身が黄色い「あさみちゃん」という、かわいらしいブランド名の「アサリ」
この地区の井口漁協は、ワカメや干潟でのアサリの生産に20年ほど前から力を入れてきた。しかし、近年、秋になっても海水温が下がらずアサリを餌とする魚が南下しないため、数が減っているという。

井口漁協の波田輝明 組合長は「アサリを餌にするナルトビエイは、秋に海水温が下がったら南に帰っていたが、海水温が下がらないので、いつまでもいて、アサリを食べ続けるので、段々減っている」とその影響を語る。
また、冬に育つ養殖ワカメも種を付けて海に出すのが、例年11月だったが、ここ10年は海水温が下がらず遅れており、2024年は12月中旬になったという。

波田組合長は「環境が大きく影響していることは確かで、もっとこれから不安が増してくるんじゃないかと思う」と先行きを不安視する。
干潟とアサリを知ってもらうイベント
そうした中、地元企業などと連携して行われた今回のイベント。

広島県内の小中学校に通う子どもと親、およそ50人が参加し、まずはアサリの生態や少なくなっている原因などのレクチャーに真剣な表情で耳を傾けた。

そして、干潟に降り、アサリを堀る作業を体験。参加者らは、アサリは魚に食べられないようネットで守られていることを知る。
ある参加者は「干潟に来ることはないので、小さいときに体験して、将来、地球や環境を守ることを考えてくれたらいい」と連れてきた子どもの将来に役立つことを期待する。
「アサリの砂はどこから入ってくるのですか?」と波田組合長に質問していたのは、中学1年の柳田昴秀さん。海が好きで、アサリのことを深く知りたいと今回参加したという。

中学1年 柳田昴秀さん:
「アサリを掘って獲ることとか、アサリの害になる生物のこととかを友達に伝えていきたい」
柳田さんが質問したアサリの砂だが、波田組合長によると「殻の周りに砂が入っているだけで、お腹の中に食べているわけじゃない」ということだ。

井口産のアサリはまだ収穫量が少ないため、広島市内のレストランでしか味わうことができないが、いずれは広島県内に流通させたいということだ。
海水温の上昇は漁業に影響を与えているが、子どもたちに、その事情を理解してもらうことも食育の一環と言えるだろう。
(テレビ新広島)