6月から変更されるものがあります。それが、刑法の新しい刑罰「拘禁刑」です。刑罰の種類が変わるのは刑法が明治40年、1907年に制定されてから初めて、明治から続く刑罰のあり方が大きく変わる大転換となります。
それでは、拘禁刑とはどういう刑罰なのか、解説していきます。
拘禁刑とはこれまでの懲役と禁錮を一本化したものです。懲役は、刑務所などの刑事施設で刑務作業が義務付けられている刑罰、禁錮は刑務所などに拘置されますが、刑務作業の義務はありません。
一方、拘禁刑は年齢層や精神疾患、障害の有無など受刑者ひとりひとりの特性に合わせて作業と指導を柔軟に組み合わせた処遇プログラムです。狙いはいたってシンプルで、受刑者を「懲らしめる」のではなく、更生を促して、再び罪を犯さないようにするものです。その背景を、法律の専門家に聞きました。
岡山大学大学院の神例康博教授は、拘禁刑導入の背景には懲役と禁錮の区別があいまいな現状があると指摘します。
(岡山大学大学院 法務研究科 神例康博教授)
「懲役刑は刑務作業、働くことが刑罰だが、禁錮刑の受刑者も8割くらいが自ら願い出て作業している。禁錮刑と懲役刑を分けることについて合理性がないという理解が前提にあった」
また、現在、懲役刑の受刑者には1日8時間、週40時間の刑務作業が義務付けられていて、更生プログラムに割ける時間が限られています。拘禁刑を導入すると刑務作業の義務はなくなるため、受刑者ひとりひとりの特性に応じたカリキュラムを設け、きめ細かく更生を後押しできると言います。
(岡山大学大学院 法務研究科 神例康博教授)
「プログラムは受刑者の個々の特性・ニーズに応じたものに変わっていくので自分がなぜそういうことをやっているのかという意味を持ちやすくなる。「やらされている感」がなくなる。それが理想」
・・・拘禁刑のポイントは、受刑者の更生プログラムにしっかり時間を割けること
「従来の懲役や禁錮は懲罰の意味合いが強く、刑務作業なども画一的で、再犯防止に十分つながっていないという指摘がありました。刑務所を出所後、再び入所する再犯率は岡山県内では50.1%、香川県内では45.2%と高い傾向にあることが分かります」
・・・再犯率をどこまで下げられるか、長いスパンで見守る必要がありますね
「そのためには受刑者の社会復帰が大きな課題となります。出所後に仕事に就けなかったり、社会から孤立して再び犯罪に手を染める人は少なくありません。受刑者が更生できれば、犯罪が減り、それが社会全体の安全・安心につながる。その認識をいかに共有できるかが求められています。
実際に、拘禁刑の適用対象となるのは6月1日以降に起きた事件・事故で起訴され、有罪になった場合です。ここまで、拘禁刑の解説でした」