夏も近づき、海へ遊びに行く人も多いことだろう。そこで遭遇に注意したいのが、クラゲの仲間である「カツオノエボシ」。
きれいな見た目とは裏腹に、無数の“毒針”を持ち、刺されると激痛をもたらすという。
海の危険生物に詳しい、東京海洋大学海洋資源環境学部の教授・永井宏史さんに、生態と被害に遭わないためのポイントを聞いた。
(刺された場合の対処法はこちらの記事へ)
風に乗って浅瀬や浜にやってくる
カツオノエボシは、青く透き通った浮袋と長い触手が特徴の生物。浮袋は10cm程度だが、触手は10m以上になることもあり、触手に「刺胞」(しほう)という “毒針”を持っている。

主な生息域は太平洋側の沖合だが、浅瀬や浜に現れることも。SNSでは目撃情報がよく投稿されている。なぜ身近な場所に現れるのかというと、風に乗って漂着してくるから。
「彼らは自分の力で移動する能力がありません。浮袋がヨットの帆の役割を果たし、風に吹かれるがまま移動してくるのです」

暖かくなると南風に乗ってやってくるので、遭遇する確率も高くなるそう。特に夏場の南風が強くなるシーズン(6~9月)は、海沿いで見かけることも増えるという。
傷が一生残る可能性も
そんなカツオノエボシが厄介なのが、刺されると激しい痛みに見舞われるところだ。
「電流が走ったように痛いので、別名“電気クラゲ”とも呼ばれます」
永井さんによれば、カツオノエボシの“毒針”に刺されると、タンパク質性の毒素を体内に打ち込まれる。そのため人間の免疫機能が反応し、激しい炎症や発熱などが出てしまうそうだ。

「触手に触れた面積が広ければ広いほど、影響も大きくなります。ひどい場合、ケロイド状態の傷が一生残ってしまうこともあります」