「あの子にもう一度会いたい」――羊毛フェルト作家の米良美津子さんは、飼い主の切実な願いに寄り添い、亡くなったペットの姿を実物そっくりに再現している。写真や飼い主から伺う思い出を基に、命の気配までをも紡ぎ出す丁寧な手仕事は、失った悲しみを愛おしい思い出へと変えていく。一針一針に温かな願いを込める作家の活動を追った。

 針一本で命を吹き込む

宮崎県新富町に拠点を置く羊毛フェルト作家の米良さんは、3年前から「亡くなったペットを実物のように形にする」作品を作っている。

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米良さんは、作品を手にした瞬間に飼っていた犬や猫を思い出してもらえるよう、肌触りが良く、優しくふわっとした質感にこだわっている。

ミスティカル キャット 米良美津子さん:
笑顔で、幸せに暮らしていた時の表情や、クセ・しぐさなどを思い出してもらえるように意識しています。

使用するのは、「ニードル」と呼ばれる特殊な針だ。羊毛をこの針で何度も突くことで、繊維のキューティクルが絡み合い、自由な造形が可能となるという。

毛の色は米良さんが自ら調合して作り出し、猫の目も一つ一つ手作りで再現する。さらに希望があれば、亡くなったペットの被毛やひげ、遺骨の一部を作品の中に埋め込むこともあるという。

 悲しみを分かち合う対話

取材当日、米良さんは東京の女性からの依頼で、一匹の猫を制作していた。実家の母親がペットを亡くして深く落ち込んでいるため、娘から母親への贈り物として依頼されたものだという。

依頼を受けると、米良さんは飼い主からじっくりと話を聞く。

「やきもち焼きで甘えん坊。家族が落ち込んでいると隣に座って寄り添ってくれる優しい猫」だったという。米良さんは、性格や見た目の特徴を把握し、写真を見ながら絵を描く。

米良さん:
寂しさや悲しさを、自分も引き受けるつもりでお話させてもらっています。「ずっと悲しかったのが、少しずつ癒えていくように思いました」という感想も多くて、そこにやりがいがあると感じます。

 自身の経験から生まれる共感

相棒猫「ちっち」の制作を米良さんに依頼した女性を訪ねた。

制作を依頼した 富田みきさん:
一人暮らしをしていた時の相棒で、思い入れのある猫だったので制作をお願いしました。箱を開けた途端、本当にそっくりで、「ちっちが帰ってきた!」と感動しました。当時の、ちっちとの思い出と、自分のことを思い起こす貴重な時間になりました。

米良美津子さん:
自分が作った羊毛フェルトが、こういう形で思い出や様子を呼び起こす媒体になるということがうれしいです。大事に持っててくださるというのもうれしくて、励みになります。

前を向くためのきっかけに

米良さんがここまで飼い主の心に寄り添う背景には、自身の辛い経験がある。

米良さん:
これまで何匹も猫を飼ってきたので、「幸せだったのかな」とか、「ああしてあげればよかったな」とか、家族とかにもなかなか言えない時があったりして、本当に時々涙が出ることもありました。そういう時に、自分が作った羊毛フェルトで表情や目線を感じてもらって、その子がいるな、と思ってもらえるだけで心が癒されるんじゃないかなと思います。

悲しみの淵にいる飼い主に対し、米良さんが伝え続けているメッセージがある。

米良美津子さん:
最期の辛かった時も一場面ではあるんですけれども、楽しかった時、幸せな時を思い出して過ごしていただいて、少しでも気持ちを軽くしていただいて、また思い出して前を向いて、一日一日を大事に過ごしてほしいと思います。

【Mystical CAT】

 料金など詳細はインスタグラムにて:mystical_cat_japan

(テレビ宮崎)

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