6月14日、アメリカのトランプ大統領は80歳を迎える。
史上最高齢の大統領 周囲も驚く日常
世界最大の経済大国であり、世界最大の軍事力を擁するアメリカの大統領職は、世界で最も過酷な仕事の一つともいわれる。
2月からは2003年のイラク戦争以来、23年ぶりとなる中東での大規模な軍事作戦を指揮している。
史上最高齢となる78歳7カ月での大統領返り咲きは、高齢や健康不安が指摘されたバイデン前大統領(大統領就任時は78歳2カ月)を上回る。
一方、トランプ氏の日々の活動量は、バイデン氏の時代と比べても、公の場に姿を見せる頻度や記者団への対応、演説、イベントへの参加回数は際立って多い。もっとも、80歳という年齢に加え、アメリカ大統領という職責ゆえ、高齢や健康への不安は常に付きまとう。
“最高機密”の一つとされるアメリカ大統領の真の健康状態は、退任後まで明らかにならないこともある。
トランプ氏の周囲に話を聞くと、80歳を迎える今もなお、同行記者や側近たちを驚かせるような日常を送る姿が浮かび上がってくる。
「外遊中の機内では“一睡もしない”」
「大統領は移動中の飛行機の中では一睡もしないんだ、信じられない」
そう語ったのはトランプ氏とともに大統領専用機で外遊などに同行するアメリカ大手メディアの記者だ。
私たちがよく目にする大統領専用機内でのトランプ氏のインタビューの多くは記者に予告なく行われる。このため、移動中の真っ暗な機内で、トランプ氏が突如として記者たちの席の前に現れることも少なくないという。
トランプ氏はその際、記者たちを驚かせるかのように「寝ているのか?」などと笑みを浮かべながら声をかけてくる。自身が突然現れ、記者たちの慌てふためく様子をトランプ氏が楽しんでいるようにも見えるという。
2025年10月の日米首脳会談にも同行したアメリカメディアの記者からは「ワシントンから日本へのフライトは10数時間と長いが、大統領は飛行機で全く眠らない。だから私たち記者も寝ることができずに困っているんだ」と話す。
また、「同行するスタッフたちも大統領が眠らないからいろんな仕事を振られ、全く休めないと話していた。外遊に同行したがらないスタッフたちもいるんだ」といった愚痴めいた声も聞かれた。
「移動中の機内で眠らない」トランプ氏の話は有名で、私も複数のトランプ氏の知人から聞いたことがあった。
長時間移動の機内で本当に一睡もしないかどうかは不明だが、各国を訪問する移動中の機内でも、時差に関係なく電話や執務を続けているとの証言は少なくない。
絶え間ない彼のSNSへの投稿も、その一端をうかがわせる
トランプ氏の側近の一人で関税政策も担うラトニック商務長官は2025年12月のFOXニュースのインタビューで「トランプ氏の一日の睡眠時間は4時間」と明かし、それ以外は常に働いていると語った。
1期目と変わらない「一日4時間」睡眠
またそれを裏付けるかのように、ルビオ国務長官も6月の議会公聴会で「眠らない大統領」を巡り説明した。
議員から「会議中にトランプ大統領が居眠りをしているのではないか」と問われた際、ルビオ氏は「それは間違いだ。私は大統領が寝ているのを見たことがない。逆に彼は寝ておらず、それが大問題だ。なぜなら私のもとへ午前2時や5時に仕事の電話がかかってきているからだ」と反論した。
大統領1期目の2017年、トランプ氏(当時70歳)は現地メディアの取材に対し「午前1時に就寝し午前5時に起床する。睡眠時間は4時間から5時間」と語っていた。
それから10年、トランプ氏の睡眠時間はほぼ変わっていないことになる。トランプ氏の日々の動きからも、わずか4時間の睡眠時間を象徴するような一日を垣間見ることは少なくない。
80歳を迎える1週間ほど前の6月8日(月)。この日は自身のSNSへの短い投稿から始まった。
最初のSNS投稿から21時間後の未明に帰宅
最初の投稿は午前5時26分だった。「No way this could have happened. Rigged Election!(こんなことが起きるはずがない。不正選挙だ!)」トランプ氏は、前日に行われたロサンゼルス市長選の予備選をめぐり不満をあらわにした。
この日のSNS投稿は、週末から過ごしていた東部ニュージャージー州のベッドミンスターにある私邸から行われた。そして最初の投稿から10分後の午前5時36分、トランプ氏は2度目の投稿を行った。
今度は、攻撃の応酬を繰り返すイランとイスラエルに対し「直ちに攻撃をやめなければならない」と事態の鎮静化を促した。その1時間後(午前6時34分)にもSNSで、イランとイスラエルによる攻撃の停止を呼びかけた。
詳しい時間は分からないが、このあとトランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相とも電話で会談した。
この日に公表された公務はなかったが、秋から冬、春にかけて過ごすフロリダ州の私邸マールアラーゴやニュージャージー州ベッドミンスターでは、自身が所有するゴルフクラブまで足を運び、多くの来客と面会する傍ら、趣味のゴルフも満喫する。
さらにイラン情勢をはじめ、今は、秋の中間選挙に向けて、自らの側近とも繰り返し協議を重ね、戦略を練る場ともなる。
トランプ氏はこの日の午後7時過ぎ、NBAファイナルの観戦のため、滞在していた東部ニュージャージー州からニューヨークへ向かい、マンハッタン中心部にあるマディソン・スクエア・ガーデンで約4時間バスケットボールの試合を観戦した。
日付が回った午前0時過ぎにニューヨークの空港で閣僚らとともに15分ほど記者団の質問に応じた。その後、大統領専用機に乗りこみホワイトハウスに戻った。
“帰宅“時間は最初のSNSの投稿から約21時間が経過した午前2時過ぎだった。“未明の帰宅”はトランプ氏にとって決して珍しくはない。
起床から就寝、その間の移動も含めトランプ氏は電話魔としても知られている。
また、記者への対応についても30分以上に及ぶことも珍しくなく、演説は1時間から2時間に及び、選挙中ともなれば、それを1日複数回こなすこともあるほどだ。
高齢不安を一蹴も根強い懸念
トランプ氏は5月、2期目中としては3度目となる健康診断を受けた。検査後自身のSNSで「すべての検査結果が完ぺきだった」と投稿、自画自賛した。
ホワイトハウスも「驚異的だ」と検査結果を評価する。しかし、足首のはれや手のあざ、時折イベントや会議中に居眠りをしているような場面も見られるほか、診断の詳細は明らかになっておらず、疑問を投げかけるメディアも少なくない。
ホワイトハウスに常駐し、日々、トランプ氏を撮影し続ける大手メディアのカメラマンは、1期目と変わらないトランプ氏の活動量に感嘆の意を示す一方で、公務等を終えて深夜にホワイトハウスに戻る際には、「足元がおぼつかず、ふらふらしている様子も見られる」と明らかな衰えを感じることもあると語る。
少なくとも取材現場で目にするトランプ氏は、同世代の指導者と比べても際立った活動量を維持している。
しかし、2022年の再出馬表明から4年間、トランプ氏を追い続けている者としては、時折聞かれるかすれた声や声量の変化、言い間違いに、80歳という年齢を意識させられることもある。
そこには、世界最強の権力者であっても避けることのできない「老い」の影がのぞく。
(FNNワシントン支局 千田淳一)
