食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「ゴーヤーチャンプルー」。飯田橋にある「沖縄料理 島」を訪れ、ゴーヤーの爽やかな苦みと島豆腐の優しい食感が織りなす一品を紹介。
沖縄の返還前から続く店の、初代から孫に受け継がれた思いにも迫る。
戦後いち早く沖縄料理を東京で広めた
植野さんがやってきたのは都内屈指のアクセスを誇る飯田橋駅。JRと地下鉄5路線が交差し、ビジネスにも観光にも最適な拠点だ。
周辺には大学やオフィスが立ち並び飲食店も充実しており、活気と利便性が同居するエリアになっている。

東京の中心地にありながら沖縄の風を感じられるのが、「沖縄料理 島」。開店は1962年。
この店は、戦後いち早く沖縄料理を東京で広めた伝説の店で、3代目店主の山本哲さんが、開店当初から受け継がれる味を守っている。32歳ごろから店を手伝い始めた哲さんは、現在両親の2代目夫婦とともに働いている。

昼は沖縄そばや定食を提供し、夜は昔ながらの沖縄家庭料理と泡盛を楽しめる居酒屋。「学生時代、40年くらい前から通っている。一番好きなのは沖縄そば」「今日はソーキソバ。いつもさっぱりしていてお肉もホロホロで食べやすい」と常連客からも人気。
素朴でほっとする沖縄の味に誘われて、気づけば足を運んでしまうそんな店だ。
貸本屋の祖父が急に飲食店へ
植野さんは「表に創業1962(昭和37)年と書いてありましたけど、当時沖縄料理の店はあったのですか?」と質問。

哲さんは「この辺では数軒、数えるくらいしかなかった時代です」と答える。さらに、創業者については、「祖父母が宮古(島)出身で戦前にこっちに来ている」「初めは貸本屋でした」「ある時に祖父が“沖縄をもっと本土の人に知ってもらおう”と貸本屋を辞めて翌日から急に始めて…」と店の成り立ちを教えてくれた。
創業当時の様子を哲さんは「(沖縄の)食材は届かなくて、(沖縄)そばも仕入れられないので自分たちで作ろうということになりました」と当時の苦労を話す。

植野さんは「東京でも沖縄料理店っていろいろありますけど、こんなに美味しい沖縄そばのお店はないですよ」と自家製麺を絶賛した。初代が試行錯誤し作り上げた麺は代々受け継がれ、当時の味を家族で守り続けている。
2代目の文江さんに開店した頃の話を聞くと「中学1年生の時に始めて、家族総出で私の祖父母まで引っ張り出された」「煮込み作るのはおじいちゃんとかと分担」「素人だったからいろいろな人のアドバイスを聞いて試行錯誤で始めていました」と思い出深く語った。

本日のお目当て、沖縄料理 島の「ゴーヤーチャンプルー」。
一口食べた植野さんは「シンプルだけどすごくバランスがいい」と絶賛した。
沖縄料理 島「ゴーヤーチャンプルー」のレシピを紹介する。