ミャンマーを震源とする大地震から、4月28日で1カ月が経過した。
被災地では医療体制が追いつかず、人々は過酷な生活を強いられている。
一方、高層ビルが倒壊するなどの被害を受けた隣国タイでは、建物の安全性への不安から“高層住宅離れ”が広がっている。
ミャンマーを震源とする大地震から1カ月
3月28日、ミャンマー中部で発生した大地震では、第2の都市マンダレーを中心に、建物の倒壊など大きな被害が出て、日本人1人を含む3700人以上が死亡、100人以上が安否不明となっている。
被災地では家を失った多くの人たちが、いまだに路上生活を続けていて、日本をはじめ各国から派遣された医療チームがけが人の治療などにあたっている。

4月16日から21日まで現地で活動した医師によると、最高気温が40度を超える過酷な状況の中、医療体制は追いついていないという。
TMAT札幌東徳洲会病院・合田祥悟医師:
地震による被害に遭われて、その後一度もまだ医療にアクセスできていない、受診ができていないという方もいらっしゃいました。けがに伴って傷をそのままにしていて、そこにばい菌の感染を起こすような方がいらっしゃった。

4年前のクーデター以降、実権を握る軍事政権は、対立する民主派組織などとの戦闘を4月30日まで一時停止すると発表したが、この間も空爆を行っていたとみられる。
民主派組織「NUG(国民統一政府)」報道官は、「停戦は表向きだけだ。国際支援側に現場の事実を知ってもらいたい」と訴える。
戦闘が続く中で、被災者の救援や復興活動が進むかが今後の焦点となる。

建設中の高層ビル倒壊でタイ当局が中国国営企業などを捜査
一方、隣国タイの首都バンコクでは、地震により建設中の高層ビルが倒壊し、4月29日時点で66人の死亡が確認され、いまだに28人の安否が分かっていない。
タイ当局は、建設に使用されていた鉄筋が強度の安全基準を満たしていなかった疑いで捜査。
建設を請け負っていた中国国営企業の従業員4人が現場近くの事務所から工事の資料を持ち去ろうとした罪で有罪判決を受けたほか、企業幹部の中国人の男らが逮捕された。
ただ、鉄筋を製造した中国企業は、設計など別の要因も考えられるとして責任を否定し、原因究明には至っていない。

「高層階は怖い」住み替え相次ぎ不動産市場に影響も
バンコクなどでは、政府の総合庁舎をはじめ、ほかのオフィスビルでも壁や柱に亀裂が入るなど、1万7000件以上の被害が報告された。
タイ入国管理局などが入る30階建てのビル入り口には、「使用禁止」を示す赤い張り紙があった。
ビルの鉄骨の構造部分に損傷がみられるため、使用できない状態だという。

こうした中、建物の安全性に対する不安が高まり、消費者の生活にも影響が出ている。
地震前に人気だった多くの高層コンドミニアムも、壁に亀裂が入ったり、浴室のタイルが剥がれ落ちるなどの被害を受けたため、住み替えを希望する人が相次いでいるという。
不動産会社「アーバンランド」五月女基社長:
もう高層階に住むのは怖いということで、低層階がだいぶ埋まってきているのかなという気はします。
この会社では、ビルのオーナーと1件ずつ連絡を取り、安全性を確認しているという。

タイ・コンドミニアム協会は、2007年以降に建設された高層住宅は耐震設計が義務づけられていて安全だと強調するが、開発事業者の信頼回復が大きな課題となっている。
その一方で、安全性の重視から建設コストが上昇し、販売価格が引き上げられるとの見方もあり、家計の圧迫や不動産市場への影響が懸念されている。