鹿児島県警の不祥事が止まらない。今回は警察庁のキャリア官僚である前捜査2課長が、知人女性への不同意性交の疑いと捜査情報漏えいの疑いで書類送検され、停職1カ月の懲戒処分を受けた。県警本部長は「県民の皆さまに深くおわび申し上げます」と頭を下げたが、県警の信頼回復への道のりは依然として険しい。
複数の女性と「不適切な異性交際」
3月21日付で停職1カ月の懲戒処分を受けたのは、県警本部の前捜査2課長、安部裕行警視(29)だ。県警によると、安部警視は警察庁のキャリア官僚で、着任当初の2023年8月から2024年12月頃にかけて、複数の女性と並行して不適切な交際をしていたという(安部警視の年齢は2025年3月21日時点)
岩瀬聡本部長は会見で、「複数の女性と並行して不適切な異性交際を行い、関係女性の1名に対し、当時、自らが捜査2課長として指揮にあたっていた事件に関する情報を漏らした」と説明した。

不同意性交と捜査情報漏えいの疑い
安部警視は、知人女性1人に対する不同意性交の疑いで2月14日に書類送検されていた。また、別の知人女性1人に対して2024年4月から6月の間に、自身のスマートフォンからメッセージアプリを使って複数回にわたり捜査情報を送信し漏えいした疑いで、3月12日に鹿児島地検へ書類送検されていたことも明らかになった。

漏えいした情報は、当時、安部警視が捜査していた2つの事件に関するもので、調べに対して安部警視は、「仕事で忙しいことを相手に理解してもらうために、事件に関する情報を伝えていた」と捜査情報の送信を認めているという。

相次ぐ不祥事で県警の信頼揺らぐ
鹿児島県警では2024年度に入ってから、警察官の不祥事が相次いでいる。改めて不祥事の経緯をまとめた。
今年度の県警不祥事の経緯 ■2024年4月 巡査長(49)を情報漏えいの疑いで逮捕、警部(51)を不同意わいせつの疑いで逮捕 ■5月 巡査部長(32)を盗撮の疑いで逮捕、前生活安全部長を情報漏えいの疑いで逮捕 ■8月 県警が再発防止策を発表 → 「改革推進委員会」の第1回の会議 ■10月 3つの事件で被害届の受理をしぶるなど不適切な対応、現職警察官36人を処分 ■2025年2月 県警本部捜査2課長 安部裕行警視を不同意性交の疑いで書類送検 ■3月21日 安部警視を情報漏えいの疑いで書類送検&懲戒処分について (年齢はいずれも逮捕時点)
2024年度がスタ-トしたばかりの4月以降に、警察官が相次いで逮捕された。当時49歳の巡査長が捜査情報を漏えいした疑いで逮捕されたのを皮切りに、51歳の警部が不同意わいせつの疑いで、そして5月、32歳の巡査部長は公衆トイレで盗撮した疑いで逮捕された。この3人にはいずれも有罪判決が下されている。さらに、県警の最高幹部の一人である前生活安全部長までもが、警察の内部情報を漏らした疑いで逮捕されるという異常事態に陥った。

相次ぐ不祥事を受けて、県警は2024年8月に再発防止策を発表し、その実効性を担保するために幹部クラスで組織された改革推進委員会では、9月末までに再発防止策に着手することを決めたが、その後も不祥事は続いている。
10月には詐欺事件をはじめとする3つの事件で、被害届の受理をしぶるなど不適切な対応があったとして、現職警察官36人が処分された。そして年が明けた2025年2月、県警本部の捜査2課長である安部警視が知人女性への不同意性交の疑いで書類送検され、その捜査の関連で情報漏えいの疑いも発覚し、懲戒処分と合わせて3月21日発表された。
ここには主なものを挙げているが、このほかにも警察官が懲戒処分を受けた事案が複数あった。再発防止に向けた動きが道半ばとはいえ、あまりにも不祥事が続いている。
県民の信頼回復への課題
今回の安部警視の不祥事を受け、県警は「警察への信頼を著しく損なった」などとして停職1カ月の懲戒処分としたが、安部警視は辞職する意向は示していないという。
また、鹿児島地検は書類送検された2件の容疑について、3月21日付で不起訴処分としている。地検は不同意性交については、関係者のプライバシー保護の観点から理由を差し控え、情報漏えいについては動機が悪質とは言えず、漏えい先の女性が事件とは無関係であることなどから起訴猶予と説明している。
県警は捜査2課長の新たな人事を発表し、3月27日付で警視庁捜査第1課の森野青警視が着任することを明らかにした。森野警視は県警の捜査2課長としては2人目の女性となる。

相次ぐ不祥事に対し、県警には再発防止策の実効性の検証と、県民への情報提供の徹底が求められている。県警の信頼回復への道のりは長く、県民の目は厳しさを増している。警察組織の綱紀粛正と透明性の確保が、今後の鹿児島県警の最重要課題となるだろう。
(鹿児島テレビ)