未だ深刻な影響が続く、岩手県大船渡市の山林火災。フジテレビ系列では取材団が組まれ、福島テレビからは氏家彦斗記者が3月14日から現地に入った。大きな被害を受けた大船渡市三陸町を中心に取材。火は鎮圧状態となったが、多くの人が困難の中にいる。
2025年2月に相次ぎ発生した山林火災
大船渡市の面積の9%にあたる約2900haが焼失し、1人が亡くなった。周辺には一時避難指示が出たが、鎮圧宣言を受けて3月10日にすべて解除された。

3月18日、氏家記者は大船渡市赤崎町合足で地元警察・消防による被害家屋確認調査を取材した。
「山肌が広い範囲で黒く焼け焦げています。鎮圧から一週間以上が経った今でも、現場には焦げ臭い匂いが残っています。そして、建物があったものとみられますが、焼け跡から火の勢いの強さ、そして被害が広範囲に及んでいたことがわかります」
![]()
大船渡市赤崎町合足でリポートをする福島テレビ・氏家彦斗記者
現場はほぼ火が消し止められた「鎮圧」状態。再び燃える恐れのない「鎮火」には至っていない。現在も、消防車両や防災ヘリが見回りをつづけ、新たな熱源がないかを警戒している。(2025年3月20日時点)
故郷を思い駆け付けた女性
3月15日、氏家記者は大船渡市三陸町を取材していた。避難指示が解除され初めて迎えた週末、一人の女性と出会った。
崎山結伎さんは、宮城県仙台市からふるさとに駆け付けた。「映像とか見て、ないだろうなとは思っていたけど、自分の家なのでこの目で確認したいなと思って」と話す。

高校を卒業するまで過ごした思い出の家、崎山さんは「山の方から火の手がまわってきているので、飛び火してうちに燃え移ったのではないかなって。やはりショックですね。色々な思い出が詰まっていた所なので」と話した。

今回の山林火災で、被害を受けた建物は大船渡市内で210棟。現在も約200人が避難生活を送っている。大船渡市からの要請を受け、岩手県は現在行っている被災者の意向調査をもとに仮設住宅の数を決め、建設を進めている。(2025年3月20日時点)
生活と基幹産業の再建
ワカメ養殖発祥の地である大船渡市三陸町綾里。山林火災の避難指示によって漁の開始は遅れたが、再開することができた。
漁師の大平秀男さんは「綾里は元気だぞ、自分たちはまだワカメを例年と変わらずやっているぞというのを一日でも早く見てもらって、応援してくれた方々が見てくれて安心してくれればいいかなと」と話す。

ただ、山林火災によって受けた被害は甚大だ。漁師の古川祐介さん(40)は、自宅や船は無事だったが、資材などを置いていた作業場が全焼。被害額は少なくとも1000万円に上るという。ワカメを茹で、塩漬けにする機械が被害を受けたことで、加工品としての出荷ができなくなり、大幅な収入減は免れない。

「焼けてしまったものは仕方ないけど、普段通りワカメができないというのは悔しい。生活支援もそうですけど、建物とか道具とか支援してもらいたいという思いはありますね」と古川さんは話した。

綾里漁業協同組合によると、定置網などの資材を保管していた倉庫が全焼し、被害額は10億円以上に上るという。新たな道具の納期も含めて、1年はかかるとみられている。
被災した人たちの“生活”と“基幹産業”の再建と、課題は山積している。
直接、被災した人の声を聞いて
氏家記者は「現地で取材をすると、住宅の他にも車などが火災に巻き込まれ被害に遭った方も多くいらっしゃった。り災証明書の交付なども始まっているが、自宅が全焼した人は『現実を受けとめてやっていかないといけない、覚悟の証明書』だとも話していた」という。

続けて「三陸町綾里の漁師・古川さんは、東日本大震災では津波で自宅を失い、その後自宅の跡地に建てたのが今回焼失した作業場だった」
「大船渡市は漁業だけでなく、農業も盛んな地域でこちらでも大きな被害が出ている。山の沢から引く農業用水のパイプへの被害や必要な資材が燃え今年の営農が難しい状況になっている農家もいる」

「そうした中でも、取材中には再建に向けた前向きな声が多く聞かれた。その思いを行政、そして私たちがどのような形でサポートできるのか、考え行動しなくてはいけない」と報告した。
(福島テレビ)