ブリなどで有名な富山湾 だが近年ずば抜けて漁獲量が多いのは…

富山湾で最も多く獲れている魚は何だろうか。

答えは、実はイワシで、漁獲量は6800トンあまりとダントツで多くなっている。

そして、イワシの漁獲量の推移を見ると、ここ5年間は毎年漁獲量が増えている。
いったいなぜなのか、その理由を取材した。

この記事の画像(13枚)

2月21日ー。

*リポート
「午前1時半の岩瀬漁港です。寒波の影響もあり、現在の気温は氷点下1度以下となっています。この寒さのなか漁師たちがこれから港を出港します。」

2月下旬、岩瀬漁港の定置網漁船に乗せてもらった。

出港して15分ほどで定置網が仕掛けられたポイントに到着。
2隻の船で網を手繰り寄せていく。

*リポート
「定置網が水面近くまであげられてきました。網の表面にはおびただしい数のイワシが見えます。水面の方でピチピチと跳ねています。」

群れで泳ぐ大量のイワシが姿をあらわす

*リポート
「網の中から次々に魚が引きあげられていますが、網の中のほとんどの魚はイワシです。大量のイワシが次々に引き上げられています。」
「とにかく網のなかにはイワシ、イワシ、イワシです。」

こうした状況に漁師は…

(Qきょうのイワシの数は?)

*漁師
「いつもは倍くらい。きょうは少ない。(今年は)イワシはすごく多い。」

(Qウマヅラハギは最近少ない?)

*漁師
「最近少なくなった。」

*深曳漁業 小林貴幸組合長
「ここ5年くらいはずっとイワシが続いていて、例年だとスルメイカやカワハギの時期だが…」

イワシの大量水揚げはほかの漁港でも…

3月1日の滑川漁港。ホタルイカ漁解禁の日も…。

解禁初日はイワシが大量に入り、ホタルイカの水揚げはわずかとなった。

富山県水産研究所の調べによると、漁獲量はイワシの中でもマイワシが最も多く、2020年以降のここ5年で毎年4000トンを超えている。

*富山県水産研究所 瀬戸陽一副主幹研究員
「富山県では2012年くらいから本格的にマイワシの大量漁獲が起きて、2000トンを超えるレベルでの漁獲が続いていたが、2020年以降は毎年”4000トン”を上回る漁獲量がある。」

また、直近の4カ月で比較してみると、2024年12月まではほとんど漁獲されていなかったが、25年2月は約4000トンに急増。

なぜこの時期マイワシが各漁港で多く漁獲されるようになったのか

マイワシが富山湾に回遊するしくみについて、現在研究が進められている。

*県水産研究所 海洋資源課 瀬戸陽一副主幹研究員
「(マイワシは)2月~3月くらいに大量来遊することが多いが、ここ3年は2月上旬に富山湾に大量来遊してくるパターンが続いている。」

そのうえで、瀬戸研究員は一部のマイワシの群れが太平洋から津軽海峡を通り、日本海に入り込んだと仮説を立てている。

太平洋北部の海水温が8度以上の日数が多くなると、富山湾で獲れるマイワシ漁獲量が増える相関関係があることがわかっていて、海水温が上昇すると津軽海峡を通り抜けやすくなり、日本海に入り込む群れが増えるとみている。

太平洋北部の海水温の上昇が影響しているとみられるマイワシの豊漁

*県水産研究所 瀬戸陽一副主幹研究員
「まだ仮説ではあるが、太平洋からマイワシが来ているという科学的根拠をもった仮説が示されている。太平洋からの来遊がポイントだと考えている。太平洋から日本海への来遊のひとつの影響する要因としては太平洋北部の水温が関係してくるのではないか。近年、太平洋北部においても水温が上がってきているというデータもあり、そういったことから考えると日本海にマイワシが来遊しやすい条件になってきている。富山湾への来遊も増えてきていると考えている。」

これから最盛期を迎えるホタルイカ漁に影響することが心配されるが、岩瀬漁港の定置網の漁師は「海の恵みには変わりがない」と富山湾の変化を受け入れている。

*深曳漁業 小林貴幸組合長
「売り上げは(イワシは)あまり単価が安いので…」
「スルメイカやカワハギの方が単価が良いので、売り上げ的には良いが、何も水揚げがないよりはイワシが入ってくれた方が助かる。」

この時期のマイワシは、脂ものっていて非常に美味しいという。
値段も安く手に入るので、イワシを食べることで地元の定置網漁師を応援してはいかがだろうか。

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。