拳銃発射の残渣物
「溶融痕から、鉛、アンチモン、バリウムが検出された。拳銃発射の際に飛び散る硝煙の残渣物と推定される」

だが「現場の火薬残渣と完全一致」とまでは断定できなかった。断定はできなかったものの、コートの溶融穴が火薬残渣によるものと判明し、特捜本部は色めき立つ。15年に及ぶ捜査の中で、捜査員が一番沸いた瞬間だったという。
Xのコートから拳銃発射時に開いた穴が見つかっただけでも、Xと長官銃撃事件との距離がぐっと近づいたかのように思えたのだった。
【秘録】警察庁長官銃撃事件36に続く
【執筆:フジテレビ解説委員 上法玄】
1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。