SNSで流れてくるコンテンツや人にうらやましく思ったり、憧れを抱くことはあるだろう。
しかし、“SNSの中の人”に憧れても稼ぐことができたり、憧れがSNSで簡単に手に入ったりするわけではないという。
『ファラオの密室』(宝島社)で「このミステリーがすごい!大賞」の大賞を受賞した作家、AI研究者の山田尚史さんによる初めてのビジネス書『きみに冷笑は似合わない。』(日経BP)から一部抜粋・再編集して紹介する。
男性神話と女性神話の違い
物語には男性神話と女性神話という類型があると言われる。これは主人公の性別で決まるのではなく、ストーリーラインを分類している言葉に過ぎないので、特に令和の世ではあまり男女という性別を表す語に引っ張られないでほしい。
ただ、概念としてよく使われるので、ここではこの語を用いることにする。

男性神話というのは、いわゆる“英雄になるための旅(ヒーローズ・ジャーニー)”である。主人公が様々な困難を克服し、一人前の人間や、世界を救う英雄になる物語だ。
これがよく見られるのは古代ギリシャの神々の冒険譚で、妻や娘がさらわれ、勇敢な戦士が怪物を退治し、それを取り戻すといったものである。
このような神話では物理的な障害ばかりが描かれるが、現代の物語ではそれにとどまらない。
コンプレックスであったり、社会規範や社会制度、あるいはそれに適応できない自分であったり、といったあらゆる障害に対して、主人公がコンフォートゾーンを飛び出し、それを克服し打ち勝っていく様を描く物語は男性神話の類型である。