最近、映画館でじっくりと座って映画を見たことはあるだろうか。そしてその映画に関する情報はどれくらい「知らない」まま鑑賞しただろうか。
作家でありAI研究者の山田尚史さんによる初めてのビジネス書『きみに冷笑は似合わない。』(日経BP)は、SNSでまん延する冷笑主義を乗り越え、AIで激変する社会を生き抜くためのアドバイスしている。
「タイパ」という考えが広まり、世の中にあふれるコンテンツの触れ方や楽しみ方が変わったなかでも大切にしたいことを、一部抜粋・再編集して紹介する。
Netflixなどの台頭で触れる機会拡大
タイム・パフォーマンスという概念自体は、以前から存在したはずである。しかし、その言葉がなぜ今Z世代の中で流行っているかというと、それにはいくつかの理由があると私は考えている。
一つには、インターネットの普及により消費者目線でのコンテンツの限界費用が著しく低下したこと。もう一つは、スマートフォンの普及により消費者向けのファストコンテンツ・ビジネス市場が肥大化したことである。

前者については簡単な話で、映画のストリーミングサービスの登場がその一つだ。ストリーミングの雄であるNetflixを例にとれば、映画のチケットの約半額である月額890円の利用料金を払うことで、約4000~5000作品がいつでも見放題となる。
全てが映画ではなく、20%程度はオリジナルコンテンツと言われているが、それらも映画に引けを取らないどころか、むしろNetflixへの加入を強力に誘引するほどの面白さだ。