教祖麻原と現役警察官X
3月22日の教団施設への一斉捜索以降、井上は麻原を避け、それまで根城にしていた上九の第6サティアンに寄り付かなくなり、Xからの地下鉄サリン事件捜査本部の情報は早川に逐次報告するようになる。

早川は井上経由で聞いているXからの警視庁の内部情報が極めて重要だと思うようになっていた。Xのポケベル番号を早川が知りたいと言い出したのは、Xを指導していた井上を仲介せず直接Xから報告を受けたいと思ったからだろう。
井上に代わり、早川がXに直接アプローチしようとする動きの背後には当然、教祖麻原がいたと見るのが自然だった。

特捜本部は、麻原が早川を介してその先のXを操る必要があったとするならば、何らか重大な計画の決断に迫られていた可能性があったのではないかとの「見立て」に沿って捜査を進めていった。
【秘録】警察庁長官銃撃事件30に続く
【執筆:フジテレビ解説委員 上法玄】
1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。