個人の学習とは、個人が仕事に関する新たな知識やスキルを身につけ、成長していくことです。もちろんリーダーや先輩など他者からの影響を受けることもあります。そこで身につける知識やスキルの主体は個人です。
一方で、チーム学習とは「集団全体が学ぶ」ことを指します。
ここで肝となるのは、コミュニケーションを通じた集団内での情報共有と議論です。集団内で相談・議論し、失敗や予期せぬ結果を話し合いふりかえる中で、もちろん個々のメンバーが、そしてさらにはチーム全体として、さらに大きく成長を遂げること。これがチーム学習です。
心理的安全性が、ものを言えるチームの土台として機能することを、これまで述べてきました。
これがあることにより、通常であれば話しにくいような失敗も適切にチームで共有してふりかえり、率直な意見を言いながら喧々諤々と議論することを通じて、チーム学習が促進されます。
確保されていないチームは…
一方で、心理的安全性が確保されていないチームでは、適切に情報交換がなされず、議論も表面的なものとなってしまいます。
そうするとチーム学習がうまくいかず、社会の変化から取り残されるチームとなってしまうでしょう。

もう1つ重要なこととして、創造性やすばやい理解が求められる複雑な職務を行う場面では、心理的安全性とチーム学習および成果との関連性がさらに強くなることがメタ分析から示されています(※Sanner & Bunderson(2015))。
いわば、高度な専門知識や経験を必要とするような仕事でこそ、心理的安全性はチーム学習や成果を向上させる基盤になるのです。
チーム力を高める4階建ての構造でも、最上階に位置するのがチーム学習でした。
単に短期的な成果を追求することに留まらず、より長期的な視点でイノベーションを生み出し、高い成果を続けて達成するためには、高い心理的安全性を土台として、チーム全体で学習し、成長し続けていくことが必要なのです。
ミスが多いのはどっち?
チームに潜む問題点を見つけ出してチームが学習し成長していくという点で示唆に富む研究を1つ紹介します(※Edomondson(1996); Edmondson(2019, 翻訳 2021))。
心理的安全性研究の第一人者、エドモンドソンが大学院生のときに行った病院での調査研究です。この研究が、心理的安全性の意義に気づくきっかけとなりました。