「カバンにしまった銃はどうしたんだ?」
「逃走の際に乗り込んだ車の中で平岩さんに渡しました」

犯行当日、アメリカにいたことが確認されている平岩に銃を渡したと話す。
Xの供述はとっ散らかっていた。
凶器の銃についてのX供述は後に「明治神宮外苑で井上に渡した」となり、最終的には「井上に頼まれて、水道橋中央付近の欄干の前で傘で体を隠すようにしながら靴紐を直すふりをしてしゃがみ込み欄干の隙間から押し投げるようにして神田川に棄てた」となる。
X供述は何度も変わった。まるで蜘蛛の糸が幾重にも張り巡らされていくかのようであり、供述が変わる度にどれが真相に繋がる本物の蜘蛛の糸なのか、その糸口はますます見えなくなっていく。
【秘録】警察庁長官銃撃事件23に続く
【執筆:フジテレビ解説委員 上法玄】
1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。