「殺そうという気持ちで撃ちました」

「右手で拳銃をポケットから取り出して、右足を前に植え込みの花壇上部に膝を押し付けるように体重をかけ、左足は若干後ろに引いて半身に構えた前傾姿勢をとりました。そして、左手で撃鉄を起こし、左手で右手の銃把を支え両手撃ちするように構えながら狙いを定めました。

Xは画面中央の植え込みに膝を押しつけて長官を銃撃したと証言した
Xは画面中央の植え込みに膝を押しつけて長官を銃撃したと証言した

革手袋をしていたので引き金が引きづらいと思い、右手袋の指先を口で噛んで手袋をはずしました。
その時です。無線から『撃て撃て!』と言う井上の声が聞こえ、真ん中の男の左側腹部のあたりを狙って1発発射しました」

狙撃犯役の捜査員が現場で銃を構える 1995年4月
狙撃犯役の捜査員が現場で銃を構える 1995年4月

Xはこの時ジェスチャーを交えて銃撃の様子を説明する。

「1発目は撃鉄を起こして、後はダブルアクションで撃ちました」

犯行に使われたコルト・パイソンはリボルバータイプの拳銃である。1発目だけ撃鉄を起こし、引き金を引くシングルアクションという2段階動作を取り、2発目以降は撃鉄を起こさず引き金だけを引くダブルアクションの動作を取ったと詳細に供述した。

使用された「ホローポイント弾」 捜査資料より
使用された「ホローポイント弾」 捜査資料より

「1発目を撃ったあと。長官は前の方に崩れるようにうつぶせに地面に倒れたので命中したと思います。
秘書官は倒れた長官の右側から中腰で両手を差し出して長官を助けようと前かがみになっていました。
さらに『撃て撃て!』との声が無線から聞こえたので、地面に倒れうつ伏せになった長官に覆い被さった秘書官の隙間から長官の腰や尻が見えたので2発目3発目を続けてダブルアクションで撃ちました」

銃撃された国松孝次警察庁長官(当時)
銃撃された国松孝次警察庁長官(当時)

「この時、長官の服がビシッと動いたような気がするので弾は全部当たったと思います。秘書官はうつぶせの長官をそのままひきずっていました。

そうすると井上から『もういい、逃げろ』と指示がありましたが、もう1発正確に狙いも定めず4発目を撃ってしまったんです。井上の無線の声がした時に長官の腹部あたりが真っ赤になっていたのが見えました」

ここで石室は「4発目は何で撃ったの?」と尋ねた。
「とどめだと思って、殺そうという気持ちで撃ちました」と平然と言ってのけたXに、さすがの石室も戦慄を覚える。

逃走

「どういう気持ちになったの?」