犯行現場へ

「この後、砂利の駐車場に連れて行かれ、そこには自転車が2台ありまして、赤色に黒のかご付きのミニサイクルがあてがわれました。もう1台は黒かったですが別の人が使うと言っていました。

ここまで皆から言われて、その時には私がオウムを守らなければいけないと思うようになっていました。
井上からマスクや帽子に加えて、『これを飲めば上手くいきます』と白い錠剤2錠も渡されたので飲みました」

凶器と同型の銃 捜査資料より
凶器と同型の銃 捜査資料より

「そして、拳銃はカバンにしまい、カバンを自転車の前かごに入れ、無線機のイヤフォンを耳に入れ赤の自転車で現場に向かい、現場に着くと逃走方向に向けて自転車を停めてからマスクと手袋をつけて、帽子を被って準備しました。

狙撃位置の少し前のところで、拳銃をカバンから取り出しコートの右ポケットに入れました。その時、田上健さん(オウム信者・仮名)が来て、『頑張れ!向こうにいるから』と励ましてくれました」

事件発生直後の狙撃現場 1995年3月
事件発生直後の狙撃現場 1995年3月

「狙撃場所の植木のところにショルダーバッグを置いて、近くを行ったり来たりしてなるべく不審に思われないように少し時間を潰しました。

待っている間にFポートから40歳くらいの女性が出かける服装で出て行ったり、自転車を置いた方向に歩く男性の後ろ姿を見たりもしました」

井上嘉浩元死刑囚
井上嘉浩元死刑囚

「すると井上が無線で『間もなく敵が出ます』と言ってきました。

格子窓から長官が当日出てきた通用口が見える
格子窓から長官が当日出てきた通用口が見える

格子窓のところから正面を見ていると3人の男が出てきたんです。どれが敵なのかわからずにいました。
井上が『真ん中の男を撃て』と言ってきたので、植え込みの花壇のところに移動したんです」

石室は黙って聴き続けた。このあたりからXの供述はどこかドラマチックなものになっていく。