温泉好きに人気の観光地「嬉野温泉」で源泉の水位が過去最低となる異変が起きている。観光客増加や、湯を通す管の老朽化が原因とみられ、配管の修理を急ぐとともに深夜の利用を制限するなどの対策が行われている。
書き入れ時なのに…温泉に異変
日本三大美肌の湯といわれる嬉野温泉。温泉シーズンは寒さが厳しくなる季節。毎年、多くの観光客が訪れ、予約でいっぱいの温泉旅館も多い。

ところが、この書き入れ時に異変が起きているという。
源泉の水位が過去最低に
佐賀県によると、嬉野温泉の源泉は、近年では2021年の49.9メートルをピークに水位が下がっていて、2024年は40.8メートルまで低下した。記録が残る1960年以降最も低い水位だ。

老舗旅館として知られる大正屋の山口剛副社長は、「(源泉の水位低下に)地元のみんながびっくりして、これはいかんと。なんとかして対応しないと。せっかく今、嬉野温泉に多くのお客様が来られているのに」と不安を口にする。
湯を通す“管の老朽化”も原因
源泉水位低下の原因は何だろうか。
コロナ禍が明け、西九州新幹線の開業で観光客が増加。湯の使用量が増えたことが背景にあるとみられている。

源泉の水位低下の原因はそれだけではない。
長年にわたって源泉を通してきた「配湯管」の老朽化も原因のひとつとして指摘されている。源泉は配湯管を通して旅館や家庭に届けられるが、老朽化のため管から湯が漏れているところがあるという。

2024年11月末時点で、少なくとも26カ所で漏水が確認されていて、各地で修理が行われている。

湯が漏れている管を探して修理
嬉野温泉配湯会社の小原嘉文社長に、老朽化した配湯管の修理現場を案内してもらった。

その場所では、管のつなぎ目あたりから湯が漏れているとみられることから修理をはじめたという。

「土を取り除いて漏れているところを探し出して修理する。漏れている場所がわかったらすぐにとりかかるようにしている」と小原社長は配湯管修理の状況について説明する。
源泉の使用量や水位をデータ管理
一方、源泉を枯渇させないよう最新の技術によるデータ管理も行われている。

嬉野市は、源泉の使用量や水位などをリアルタイムで数値化するシステムを6年前に導入した。源泉所有者の毎日の使用量や水位などを24時間確認できるシステムだ。湯を安定して供給できるよう旅館や配湯会社などと連携して管理している。

グラフで示される源泉の使用量の推移を毎日、何回も確認するという大変な作業だ。源泉のくみ上げは、旅館では午前8時から10時くらいまでが多く、家庭では朝の起床時間に増えるという。
くみ上げ抑制し深夜利用など制限
県は2024年、源泉を所有している旅館などに、くみ上げる温泉の量を抑制するよう呼びかけた。くみ上げる量は「1日当たり2800トン」を上限とし、1割減を目指している。

また旅館でも、深夜帯の使用制限や日帰り入浴の休止など様々な対策に取り組んでいる。
大正屋 山口剛副社長:
個室のお風呂ではお客様へのお願いとして夜12時から朝5時までの温泉の利用を控えてもらう掲示をしている

このような対策により源泉の水位は維持できていて、旅館やホテルの営業に大きな支障は生じていないが、今後も湯のくみ上げを抑制するなど源泉の保護に努めていく方針だ。

大正屋 山口剛副社長:
嬉野温泉は有限。それを源泉所有者のみんなで水位を保つため情報共有をしながら、保護に向けて今後も取り組んでいきたい
(サガテレビ)