熊本市の庁舎建て替えをめぐる住民投票条例案について、可決して住民投票を行うかどうか議論する臨時議会が1月14日に開会した。本会議には直接請求した市民の代表も登壇し、住民投票の必要性を訴えた。議会はどのような判断を示すのだろうか。
臨時議会・本会議で市長や市民など意見
2024年12月に市民グループが約1万9000人分の署名を添えて直接請求した、新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例の制定案。

熊本市は本庁舎と議会棟をNTT桜町の敷地に、そして現在、本庁舎内にある中央区役所を花畑町別館跡地に、それぞれ移転建て替えとする計画を示している。概算事業費は約616億円。

1月14日に開会した臨時議会・本会議で大西熊本市長は、直接請求された住民投票条例制定案を提出したうえで、住民投票に反対する意見を述べた。

大西熊本市長は提案理由説明で「この6年以上にも及ぶ熟議を顧みないものであり、認めがたいものであると考える。私は熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例を制定する必要はないと考える」と述べた。

そして、直接請求した市民の代表5人が次々に登壇し意見を述べ、その中の一人の西川文武さんは「会派の意向に沿うという理由だけで、住民投票条例案を否決することがあれば『市民の意見を聞かないとは何事だ』と言われても仕方ない」と述べた。

また、大杉研至さんは「もし『熟議』を理由に請求を却下されるのであれば、何のためにこのような制度があるのか一般市民には理解できない。市庁舎建て替えは、市民に最も身近な市政の重要事項ではないか。住民投票が実施されるべき最もふさわしい事案といえる」と訴えた。

議案はこのあと総務委員会で審議されることになった。本会議終了後、大西熊本市長は「最終的な議決をするのは議会の判断なので、冷静に判断してもらえると思っている」と述べ、西川さんは「(多くの会派が)否定する意向を示しているが(議員には)しっかり考えて答えを出してほしい」と述べた。
総務委員会は全会一致で『否決すべき』
そして午後、総務委員会が始まり、自民党の田中誠一委員が「時間的エネルギーや、予算は」と質問すると、熊本市選挙管理委員会の担当者は「市長選と同じ規模なら、期日前投票を含め投票事務に3150人、開票に560人、2億4000万円前後」と答えた。

市民連合の田上辰也委員は「多額の費用と見込まれる効果は、議会の判断材料になる」と指摘。

熊本自民の澤田昌作委員は「2万人の署名は重く受け止めているが、この時期に住民投票実施の大義は見い出せない」と述べた。

また、委員会のメンバーではないものの、条例案に『賛成』の議員から申し出があり発言が許され、共産党の上野美恵子議員は「建て替えの賛否を問うたことはあったか」と尋ねると、熊本市の大津仁哉庁舎建設課長は「市議会との議論が原則であると考えて、直接は問うてない」と答えた。

熊本市の三島健一政策局長は「市民に耳を傾けていないのでないかと指摘が多々あったが、シンポジウムなどで意見を聞き、段階ごとに市民の意見を聞き、案を固めていきたい」と、今後の考えを示した。

そして委員会での採決で、条例案は全会一致で『否決すべきもの』とされた。TKUの取材によると、市議会の過半数を占める自民党、熊本自民党、市民連合、公明党の4つの会派は条例制定に『反対』の立場をとっている。

本会議での可決には、出席議員の半数以上の賛成が必要で条例案は否決される可能性が高くなった。熊本市庁舎建設の賛否を問う住民投票をすすめる会の大杉さんは「(否決すべきものとされ)非常に残念。署名の重みを考えて採決に臨んでほしい」述べた。

住民投票条例案は1月17日の本会議で採決が行われる。
(テレビ熊本)