衆院選での自民・公明両党の過半数割れを受けて、2025年は野党の動向にこれまで以上に注目が集まることが予想される。野党第一党である立憲民主党のキーパーソンがFNNの単独インタビューに応じ、衆院選後を振り返っての評価や反省点、そして新年の展望について語った。
熟議と公開を目指した国会「70点」最大の成果は政策活動費廃止
「歴史的な自公過半数割れは評価すべきだが、一方で比較第一党に及ばず、首相指名を取れなかったので100点満点ではない」

FNNのインタビューにこう語るのは立憲民主党の小川淳也幹事長だ。
2024年9月の党代表選で、野田佳彦元首相が新代表に選出されたのに伴い、新たに発足した執行部で幹事長に就任した。2005年に初当選を果たした小川氏は党の政調会長などを歴任し、ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」では主人公として扱われて注目を浴び、次世代のリーダーにも目されている。
小川氏は2024年の党の活動について振り返り、「70点」と点数を付けた。衆院選で自公過半数割れを実現したことに言及し、「熟議と公開の国会に少し近づいた」と成果を強調した。

小川氏は「与党内の事前審査と党議拘束で国会が形骸化していた。時に政府の下請け機関と言われ、時に通過儀礼のようにおとしめられてきた」と指摘した上で、引き続き熟議と公開の国会を目指す姿勢を示した。
そして、最も大きな成果として、立憲民主党など野党7党が共同で法案を提出し、慎重な姿勢を示していた自民党に受け入れさせて実現した政策活動費の廃止を挙げた。
「戦後日本政治史の最大の闇と膿の一つを解決することができた。企業・団体献金など宿題は残っているが、本当に大きい」
自民党派閥の裏金事件を受けた政治改革で焦点となった政策活動費は、政党から党幹部ら議員個人に支出される費用。使い道を公開する必要がなく、自民党では幹事長に年間10億円程度支出されるなど、額の大きさの問題も指摘されてきた。

自民党は通常国会では廃止に反対したものの、衆院選を経ての臨時国会では、政治改革を求める世論も踏まえ、廃止に舵を切りつつ、外交上の秘密などに関わる支出の一部を非公開とする「公開方法工夫支出」を設けた廃止法案を提出したが、立憲など野党側の反発を受けて撤回に追い込まれた。
小川氏は政策活動費の廃止を実現した意義を強調する一方で、衆院選直後は国会のあり方の変化が国民にどう評価されるか心配していたことを明らかにした。
「国民が望ましい変化だと感じてくれるか、昔の自公過半数での硬直化した安定、一強政治の方がましだと思われるか、勝負だと思っていた」
衆院選後の国会では、17の常任委員長ポストについて、「与党15、野党2」から「与党10、野党7」と野党への配分が増え、予算委員長には立憲の安住淳前国会対策委員長が起用され、30年ぶりの野党からの予算委員長就任が実現した。
さらに、立憲は政府の補正予算案に対する修正案を国会に提出し、能登半島支援に向けた修正を自民党に受け入れさせた。国会提出後の予算案の修正は28年ぶりだという。
小川氏は「望ましい変化が起きているとおぼろげながら感じてくれているメディア、国民が多いのではないかと感じていて、そのことに最も安堵している」と本音を吐露した。
そして、国民に肯定的に評価されている要因として、2009年の旧民主党による政権交代の頃とのある違いを挙げた。
「最も違うのは我々の中にある謙虚さ、慎重さだ。当時、自分自身を振り返って思うが、やはりおごり高ぶり、万能感に満ちていて、錯覚していた。非常に不遜な、謙虚でない政治勢力に当時の民主党はなっていた。その後、痛切に猛烈に反省しているが、15年ぶりに自公が過半数割れをした今、我々にはおごり高ぶった気持ちや、謙虚さ・慎重さ・丁寧さを失いかねない危うさがない」
旧民主党が政権交代を果たした際には、小川氏は当選2回の若手議員で、総務政務官も経験しているが、「当時の挫折と失敗の経験、あの時のことを痛切に反省している」と今でも自戒しているという。小川氏は「謙虚さ・慎重さ・丁寧さは失いたくない。これをしっかり持ち続けて、次の国会も有権者が望ましいと感じる変化を国政に起こしていかないといけない。それが野党第一党としての最大の務めだ」と語った。
反省点は野党まとめきれなかった首相指名選挙 84の無効票に「責任逃避」
一方で、熟議と公開の国会にも反省点はある。小川氏は11月の特別国会で行われた首相指名選挙での対応を挙げた。
「首相指名選挙で野党の足並みを揃えられなかった。政権批判票の受け皿たりえたが、比例票が伸びなかったことに見られるように、党として積極的な魅力や期待にまではつながりきれていない」

石破茂自民党総裁が選出されたこの首相指名選挙では、参院は1回目の投票で石破氏を選出したが、自公両党が過半数割れした衆院は1回目の投票で誰も過半数に達せず、石破氏と立憲の野田代表による30年ぶりの決選投票にもつれ込んだ。しかし、結果は石破氏221票、野田氏160票、無効84票。他の野党をまとめきれなかった野田氏に対し、石破氏の得票が上回り首相に再指名されたのである。
こうした状況に苦言を呈したのは、1993年の衆院選で過半数を得る党がなかった状況で、8党派による連立政権を実現させた小沢一郎衆院議員だ。小沢氏は首相指名選挙から2日後の13日夜、東京都内の日本料理店で約1時間にわたり野田氏と会談。野田氏に対し、決選投票での無効票に触れ、「84票が入れば内閣が取れた。そのことをよく考えるべきだ」と伝えたという。
小川氏は「野田佳彦と書いてもらえず、野党第一党の求心力が欠けているのではないかという批判は甘んじて受け止めたい。一方、それは比較第一党になれなかったこと、参議院でなお自公が過半数を持っていることの構造的要因が大きい」と指摘。さらに、無効票を投じた他の野党、日本維新の会や国民民主党に対して疑問も呈した。
「決選投票では野田佳彦と書けない人は石破茂と書くべきで、石破茂と書けない人は野田佳彦と書くべきだ。どちらとも書けないというのは逃げであり、責任逃避以外の何物でもない」
小川氏は「政治家は有権者に対して、必ずしも満足する候補者がいなくても無効票にならないように、投票に行ってくださいと呼びかけている。その責任に照らせば非常に無責任極まりない行動だと今でも思っている」と憤る。
2025年は「躍」 参院選で自公過半数割れ目指す「政権交代選挙の可能性も」
こうした状況下で勝負の年となる2025年。小川氏に「2025年の漢字」を聞くと、「躍」を挙げた。選んだ理由として、「跳躍、躍動の躍だ。ホップ、ステップ、ジャンプで言うと、ホップが新体制発足だとすればステップが衆院選での自公過半数割れ、そしてジャンプ、跳躍、躍動は参院選での自公過半数割れだ」と述べた上で、こう強調した。
「仮に参議院でも過半数を失えば政権を維持するのはなかなか考えにくい。参議院選挙は政権信任選挙で、衆議院選挙は政権交代選挙というのが今までの通例だ。しかし今回は珍しく事実上、参議院選挙が政権交代選挙になる可能性がある」
さらに、小川氏は「代表が言及されるべきことだと思うが、やはり衆院と同様、自公過半数割れという大目標がまずあってしかるべきだ」との考えを表明した。

夏の参院選までの与野党の攻防の舞台として、1月に召集される通常国会が待ち構えている。小川氏は「予算、企業・団体献金、選択的夫婦別姓、政権の信任、この4つが大テーマになる」と指摘し、スケジュール感を明らかにした。
「時間軸としては、まず本予算の衆院での採決が2月末前後、企業・団体献金は3月末前後、選択的夫婦別姓は4月以降の重要法案審議でメインイシューの一つとなる。政権を信任するかしないかという話は会期末に向けてじっくり議論することになる」
そして、小川氏は「野党の足並みが揃わなかった首相指名選挙では負けた。野党の足並みが揃った国会人事では勝った。経済政策については飲んでもらったところと飲んでもらえなかったところがあり引き分け。政策活動費は野党の足並みがほぼ揃ったことで完勝。2勝1敗1分けだ」との認識を示した上で、今後も野党共闘を目指していく姿勢を強調した。
「はっきりしていることは野党の足並みが揃えば非常に力強い交渉ができるし、揃わなければ実入りが少ない。4つのテーマに向き合うにあたっても同じで、まずは出来るだけ野党の足並みを揃える。その上で与党と対峙するのが基本的な戦略になる」
衆院選で政権交代を実現できなかった野党が、事実上の政権交代が起きる可能性もある夏の参院選に向けて、国会対応などでまとまれるか、ますます注目が集まりそうだ。
(フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久)