福岡県議会の蔵内勇夫議長(72)が旗振り役となり、服部誠太郎知事(71)も同調してきた『ワンヘルス政策』。関連予算はこの5年間で約58億円にのぼり、批判も強まっている。そうしたなか、服部知事がテレビ西日本の単独インタビュー(8月7日)で「根底から見直す」と明言した。

ワンヘルスのモニュメントに約3億円

2021年の就任以来、服部知事が県政の柱として、掲げてきたワンヘルス政策。これまで至るところで訴えてきた政策だ。

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人と動物、そして環境は互いに繋がっているという考え方に基づき、一体的に健康を守っていこうという取り組み。

ワンヘルスは、世界獣医師会の会長も務める県議会の蔵内議長が強く推進する政策としても知られている。

しかし、この5年間の県の関連予算は約58億円にのぼり、その進め方には批判も集まっている。

蔵内議長の地元、筑後市の公園に整備された、ワンヘルスのモニュメントに投じられた金額は約3億円。

また、福岡市の舞鶴公園に6千万円を投じて整備したワンヘルスパークは、目玉だった馬術体験の利用者が1日平均僅か1人にとどまり、赤字のまま閉園した。

世論調査 県民の約7割が「予算に不満」

「(ワンヘルス?)いや、分かんないです」(60代・女性)。

「(ワンヘルス?)初めて聞きました」(30代・女性)。

「何億も使って、本当に、実のあるかというのはちょっと疑問がありますね」(60代・男性)。

県民への浸透も十分とは言えない。

テレビ西日本が7月、県内の有権者を対象に実施した世論調査では、ワンヘルス政策について「予算の使い方が不適切」、または「予算を投じる必要がない」の回答が約7割を占めた。

8月7日にテレビ西日本が行った服部知事への単独インタビュー。話題がワンヘルス政策に及ぶと知事は、まずワンヘルスへの思いを語った。

「私が1期目に就任した際はコロナの真っただ中で、人獣共通感染症によって多くの尊い命が失われ、社会も経済も大打撃を被った-」

「もう二度と、こういうことを繰り返してはならんと。人々の命を、健康を守るという非常に重要な取り組み、政策であるということは理解頂きたい」

蔵内議長のおひざ元で“筑後の乱”

記者) 60億円近い予算が当初予算で投じられている。この予算の妥当性、必要性ですが…。

服部知事) 今、60億円というお話もございました。本当に申し訳なく思うのは、明確な基準もなく、例えばイノシシから田畑を守るような防護柵を作る、これ年9億円ぐらい。あるいは有害鳥獣を捕獲する経費とかもあります。こういった主たる目的は、別にある事業をワンヘルスという冠を付けて、そして区分をして、公表してきた。これで枠が膨らんでしまい、ワンヘルスと言えば予算が付くとか、何でもワンヘルスとか、そういった疑念、疑問、誤解を生んでしまった。

そして知事は、ここでしばらく沈黙した後「更にまた今、ワンヘルスセンターということでやっていますけど」と続けた。

みやま市で建設が進む総事業費約200億円のワンヘルスセンター。老朽化した保健環境研究所の移転に加え、家畜や野生動物の保健衛生を担う施設。更に、体験学習ゾーンも備える計画だ。

しかし8月7日、高額な海外視察をはじめとした一連の問題による県政への批判を受け、地元のみやま市議会は、政策の必要性や妥当性を改めて検証するよう県に求める意見書案を全会一致で可決した。

牛嶋利三・議長は「(県に)賛同しますよということで7億から8億もする土地を無償で譲渡している。地域の皆さんは余計に不安を感じている。県にはピシッとやってもらって軌道修正しながら(進めてほしい)」と話す。

ワンヘルスを推し進めることが、街のイメージ低下に繋がってしまうのではないかという懸念も出てきているのだ。

記者) ワンヘルスセンターの名称変更も検討余地があるか。

服部知事) ワンヘルスセンターというのは、ある意味、仮称のレベル。(みやま市には)ワンヘルスというものに対して、非常に推進して頂いていて、そのご理解のもとで(土地を)無償譲渡して頂いているので、その辺は地元の皆さまにもよく話をしていかないといけないと思いますが。県民から見て、納得いかないという風な。名前にこだわる必要はないと思います。

未着手の事業等については当面凍結

服部知事は7月の会見でワンヘルス政策の進め方や実態について、有識者などによる行政改革審議会に評価してもらうことを明らかにしている。

服部知事) 政策のあり方についても答申を頂きたいと思っている。こういった行革審の答申を頂くまでは、今の段階で未着手の事業等については、当面、凍結をしたいと思っている。

記者) 今後、一連の事業を根底から見直していくという理解でよいか?

服部知事) もちろんです。

知事は、着手していない事業については当面、凍結する考えを示し、一連の事業を根底から見直すことを明らかにした。

服部知事) ワンヘルスに冠をいろいろ付けてしまったために、県民の皆さまの誤解を招いてしまうことになった。これは我々の過ちであったと思っていまして、ワンヘルスのなかでやらないといけないのは、人の命を守るということ。そのためには、感染症とか、あるいは薬剤耐性菌の問題とか、こういったところに研ぎ澄ましていくというか、絞っていくことが必要なのではないか。

そうしたワンヘルスの“伝道師”を自称するのが蔵内議長だ。服部知事は、これまで二人三脚で政策を推し進めてきた。

しかし、今回のインタビューでは2人の関係性に変化が伺える発言もみられた。

服部知事) 蔵内さんに対する過度な配慮というものが、私も含め、執行部側にあったと。このことは認めざるを得ないと思います。県政の根底から根こそぎ変えると申し上げて、こういうなかで当然、過度な配慮、忖度が生じるような関係は一切、断っていく。

議長「発祥の地にはシンボルが必要」

一方、8月10日、報道陣に対し、蔵内議長は「我々、福岡県から発信したこのワンヘルスは、既にもう国策となっております」と述べた。

非難の矛先となった3億円のモニュメントについては―。

蔵内議長) あれはね、私は評価されると思います。(どういったところで?)それは、ワンヘルスというのが国際的に大きな流れになってきますので、そういう意味で、ある意味ではね、ワンヘルスの発祥の地となるでしょう。そういったところには、やはりシンボルが必要なんです。

ワンヘルス政策について、反省や見直しを口にする服部知事。一方で、変わらぬ自信を見せる蔵内議長。

共に歩んできた2人の認識に、今、大きな違いが生じている。

(テレビ西日本)

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