原材料の値上がりや消費者の節約志向が進む中、2026年は、ケーキ・和菓子店など「菓子小売業」の倒産が過去最多のペースで急増している。こうした厳しい環境の中、昔ながらの味に拘る老舗和菓子店を継ぎ、伝統を守りながら、新たなアイデアで奮闘する4代目の女性に密着した。

福岡・篠栗町にある創業80年を超える『村嶋饅頭店』。

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暖簾を潜ると自家製の餡子がたっぷり入った『紅白饅頭』や『やぶれ饅頭』といった昔ながらの商品が並ぶ。

『村嶋饅頭店』
『村嶋饅頭店』

店を営むのは、村嶋陽子さん(38)。引退した父親の跡を継いで5年前に33歳の若さで4代目として伝統の味を受け継いだ。

いろんな仕上がりが温度や気候で変わってくるので、手の感覚で粉を調整している。実際に作り始めたのは18歳から」と話す村嶋さん。厳しいの先代の下、“見習い”から和菓子職人としてのキャリアがスタートした。

「(店を)継ぐといつ思ったのか…私はもう覚えていない。ここと離れる感覚を持っていなくて。お客さんの熱量が凄い。『陽子ちゃん、お手伝いしよるっちゃろ?』『続けるっちゃろ?頑張ってね』と言われて育った。

それだけ応援してくれる人が多いということだから凄く恵まれている」と村嶋さんは、店と自分を取り巻く環境に感謝しながら振り返る。

先代の父親と共に働いていた母親の緋紗子さん(81)は、今も時々、手伝いにやってくる。娘が跡を継いだことをどう思っているのか聞いてみた。

「私は継がないで良いと思った。私が大変だったから。店の経営もあるから『しなくていい』『お嫁に行きなさい』と言っていたけど、娘がもの凄く怒る。でも、それが自分の人生だから、やったら良いかなと思って…。もう今は何もかも頼っている」と頼もしい娘を優しく見守っている。

饅頭づくりは、午前8時前から始まる。生地や餡子など全て手作りで、蒸し上がるたびに甘い香りが厨房に漂う。

『みそ饅頭』は、店の人気商品の1つ。味噌の優しい香りがふわっと香る。「味噌の味も優しいし、優しいことで白餡の味もしっかりするようになっている」と村嶋さん。

また、『黒糖まんじゅう』も店の定番として長く愛されている。元々の定番は、黒餡だったが、お客の声を受けて2026年、5年ぶりに『白あん』を復活させた。

厨房で忙しく働く2人の女性。4代目を支える心強い存在だ。

4代目支えるパートの“職人さん”
4代目支えるパートの“職人さん”

「2人ともパートさんです。ずっとやってくれているから職人の手になっている」と語る村嶋さん。4代目と共に老舗の味を守る頼りになる“職人”たちだ。

変わらぬ味を求め、『村嶋饅頭』には、多くの常連客が足を運ぶ。「お饅頭とか落雁が美味しい。饅頭はふわふわした感じ」「作りたてで餡子が美味しい。頑張って長く続けてほしい」と若き4代目を応援している。

4代目を応援する常連客
4代目を応援する常連客

老舗和菓子店の伝統は、“あんこ”の味に宿るといっても過言ではない。

それほど重要な伝統の店の神髄を先代は、娘と言えども簡単に教えなかったという。

「砂糖の量だけ、このくらいというのがあって…レシピらしいレシピは本当にない。聞いても教えてくれない。父は、昔堅気の人なので『どうすると?』と聞いても『どうとかないから見て覚えろ!』しか言わなくて。最終的に自分の舌で確かめつつという感じ」。

3代目の父 孝男さん(86)
3代目の父 孝男さん(86)

「美味しいものを出していることに確信を持ちたいので、『これは美味しいから大丈夫』と自分に言い聞かせながらやっている」と村嶋さんは微笑んだ。正に、職人の世界だ。

先代の父親と、時には喧嘩をしながら覚えた“餡子の味”。その餡子を使った地域ならではの和菓子も受け継いだ。

『がめの葉餅』。篠栗町は、柏の葉が少なく、代わりに『がめの葉』を使って作られた夏の郷土菓子だ。がめの葉は、この地域に自生しているサルトリイバラという植物の葉っぱで、形が亀の甲羅に似ていることから地域の方言で亀を『がめ』と呼ぶことから、『がめの葉餅』と言われている。

作り方も独特だ。「塩水をここに足していく。普通の和菓子を作る方法よりも蕎麦やうどんに近い作り方をする。粉に水を入れてこね上げていく」と作り方を見せてくれる村嶋さん。「昔から好きな人は、『昔の味のまま』と言ってくれるから維持したい」と伝統の味をお客さんを通じて確認している。

一方で、経営の厳しさに直面したこともあったという。「コロナがあって、『このままじゃピンチ』という時が長かった。新規がないのは結構命取り」と村嶋さんは、痛感したという。

東京商工リサーチよると、ケーキや和菓子店などの倒産が急増している。2026年は、7月までの『菓子小売業』(製造小売り含む、負債1000万円以上)の倒産は、45件に達し、過去30年間でみると、同期間では、最多を更新した。円安による原材料の値上がりで販売価格が上昇する一方、消費者の節約志向は進み、販売不振が大きかったとみられている。

このため、村嶋さんは、常連だけでなく幅広い世代に味わってもらおうと伝統の餡子を使った新たな商品を開発。イチゴやウメ、クリなど季節に合わせた大福だ。

夏の季節は『シャインマスカット大福』。先代の味と地域の人の思いも受け継ぎながら新たなアイデアで店を守り続ける村嶋さん。これからもしっかりと歩んでいきたいと決意を新たにする。

「100年はやりたいと思っている。味は昔から来てくれている人が、『あれを食べたい』と言って来てくれるので、それを維持できるような味を保つことと、新しい商品も時代に合わせて、悪い変化ではなくて良い変化をしていきたい」。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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