妻殺害の罪に問われている元長野県議の丸山大輔被告(50)の裁判が、12月23日に判決を迎える。検察側は懲役20年を求刑し、弁護側は無罪を主張している。判決を前に、勾留中の丸山被告が記者の面会に応じ、「無罪を信じて待つだけ」などと今の心境を語った。また、これまでの裁判に対する考えや、家族への思いについても述べた。
検察側は懲役20年を求刑
元長野県議の丸山大輔被告(50)は、2021年9月、長野県塩尻市の自宅兼酒蔵で妻・希美さん(当時47)を首を絞めて殺害した罪に問われている。
検察側は不倫相手の存在や希美さんの実家からの借金などを理由に「殺害するしかない状況にあった」などと指摘。議員会館から自家用車で移動し、犯行に及んだとして懲役20年を求刑した。

一方、弁護側は「夫婦間にトラブルはなく、動機はない」「当日は議員会館にいて、自宅には行っていない」と無罪を主張している。
判決を前に記者が丸山被告と面会
判決を前に12月5日、NBSの記者が丸山被告と面会した。
--普段は何をして過ごしていますか?
「やることが無いので、本を読んでいます」

--どんな本を読んでいるのですか?
「今日は、『住野よる』の『青くて痛くて脆い』ですね」
--結構本は読みましたか?
「読みました。官本という本や差し入れの本、いくら読んだかわからない」
「怒りの感情でいっぱい」
--逮捕された時はどんな気持ちだった?
「怒りの感情というか『どうなってんだ』とぐちゃぐちゃしたものでいっぱい。証拠や検察の主張をみて、冷静になる中で、どんなところがおかしいのか突き詰めて、弁護士と相談してやってきた」

--勾留されて気がかりなことは?
「子どもが一番、あとはどうしようもないので。あとは裁判の結果。子どもは心配している」
「無罪になるかどうか」
--12月23日に判決を迎えるが、今の気持ちは?
「やることはやったので、ある意味大丈夫だろうと思っている。みなさん(マスコミ)が来るじゃないですか。そうすると(2次会の後)部屋に戻ってからどうしたのかと聞かれて、『そこ大事なのか?』と思うが、皆さんが聞くということは、そこの説明が足りなかったのではという不安はある」
--(議員会館の)部屋に戻った時のことについては?
「事件当時、(私が)何をやっていたかという答えの準備をしていた。私としてはそれだけになっていて、細かいことを聞かれた時に『こんな事じゃないか』と答えちゃった。検察に聞かれたことが合わなくて、アリバイ工作と言われちゃった。正確に覚えていないのが問題だったのかな。それをアリバイ工作だといわれるとどうしようもないかな。工作だとしたら、犯人なら慎重に答えるし、はっきり中身を覚えているのではないか。犯人だろうとなかろうと、うそをつく必要はないと思う。それがアリバイ工作だといわれるのはおかしい」

--パソコン作業したかのように調書に書かれたことについて
「検察に対しては、怒りの感情でいっぱい。むこうの作戦もあったろうし、うまくやられたなと思う」
--上手くやられたなというのは?
「そういう風に言わせよう、言質取ったという感覚がある」
--メモを取ったりしていたが、公判中はどういう気持ちだった?
「おかしなところを聞き漏らさないよう、集中していた。検察の気になる所を弁護士と話して進めていた、具体的な事象の中で、実際と違う、ここは反論した方がいいことを確認していく」

--懲役20年の求刑に対してどう思っている?
「そんなことは関係ない。1年だろうと100年だろうと一緒かな。無罪になるかどうかというところしか考えていない」
「DNAが一番の証拠」
--検察の立証は十分だったと思う?
「裁判のやり方自体、検察が集めた、私を有罪にするため組み立てた証拠に反論するしかない。相手の土俵に立っているイメージはあるが、かなりの部分は否定できたかな。動機は完全に成り立っていない。逆に現場の状況は第3者がいたと証明できたのではないか。車については、動画を見れたわけではない。実際に(動画を)見れたら、私なりの反論ができたのでは」
--裁判で防犯カメラ映像の画像を見た時、どう感じた?
「初めて裁判で細かくみた。確かに似ているなとは、そう見えてもおかしくないなと思った」

--防犯カメラに同じ特徴を持った車が複数走行したのはあり得ないとする検察の主張はどう思う?
「ありえないかはわからない、何とも言えない。確かにそうだなとも思うし、弁護士が色んな反論もしていたし、車については自分でも詰め切れていない。弁護士に任せてしまって、皆さん(マスコミ)と同じくらいの情報量しかない」

--犯人に対して言いたいことは?
「『早く出てこい』ということだけですね」
--怒りの感情とかは?
「もちろんありますけど、検察への怒りの方が強いかな」
「控訴するか悩んでいる」
--有罪判決となった場合、丸山さんからしたら冤罪だったということになるが、現在の司法制度などについてはどう感じている?
「一番問題なことは、私に捜査の権限がないこと。あちら(検察)の証拠の中でやるしかない。かなり不利な状況から始まっていると思う、無実を証明したい思いもあるし、全体としては難しい。判断もブラックボックスで、裁判員の中でどういう話し合いがでているかわからない。わからないことがいっぱいあって、やりづらいという思い」

--有罪になってしまった場合、控訴するつもりは?
「悩んでいる。反論できるチャンスがある、無実を主張する意味合いはある。やるべきことをやったから、その上で本当にひっくり返るのか。無駄な労力にも思うし、裁判員裁判を尊重したい。控訴するだろうと思われるのも、面白みもないし。弁護士は控訴する気満々だけど、私は悩んでいる」

--裁判中も冷静に見えたが、どうしてですか?
「最後の話は熱を入れたつもりだったが、長い年月が経ったのもあって、最初と比べて落ち着きもある。私はあまり感情が表に出ない。表に出すとニコニコしちゃう、楽しんじゃうほうが強い。怒りとかはあまり出ない。どうせだったら楽しくやりたい」
「子どもと一緒に食事を」
--どんな生活をして、判決を迎えたい?
「無罪を信じて待つだけ。裁判が終わって退屈です。何のためにここにいるのか」
--無罪判決で釈放されたら何をしたい?
「子どもと一緒においしいものを食べられればそれでいいかな」

--公判で印象に残っていることはありますか?
「もともと出てることばかりで、中身どうこうということはない。知り合いに会えてよかったなとは思う。ニヤニヤしちゃいそうになった。してたと思いますけど」
--裁判の中で、希美さんの姉や母親の話を聞いてどう感じた?
「仲のいい家族だと思っていたので(2人の)気持ちはわかるが、私を犯人だと思っているのではないかとせつない気持ちになる。今でもみんな家族だと思っているので。犯人に対しての怒りは私も共通して持っているし、同じ思いというのはある。お義父さんが亡くなってしまって、私もそれは非常に切ないと思う」

--亡くなったお義父さんや希美さんに思うことはある?
「毎日、2人には話しかけているような気持ち。天気がいいときなんかじゃ、『天気がいいね』とかって語りかけている。そばにいるような、日常生活のような会話をしている。お義父さんと希美を意識している」
--最終意見陳述で、「仕事も失い、恥をかいた」と話していたが、恥をかいたとは?
「裁判で恥ずかしい文章が流出して最悪だなと、それがきつい。恥ずかしくて街を歩けない。あんなの必要ないでしょと。私の内面をそれで証明しようとするのが間違い」

--無罪となるには、何が決め手となると思う?
「現場の状況を見てもらえれば。DNAが一番の証拠ですよ」
言葉に詰まることなく問いかけに応じた丸山被告。面会は30分で終わった。

担当記者は面会での丸山被告の印象について、「基本的には淡々としていて落ち着いた様子でした。笑顔になったり、語気を強めたりする時もありましたが、本心がどうなのかはうかがい知ることはできませんでした」と話す。
注目の判決は12月23日。
(長野放送)