メモは見つからなかったが、Xが自分の押し入れから双眼鏡を見つけた。それを見た石室は事件発生直後の聞き込み捜査で上がってきた目撃情報を思い出す。

(目撃情報H #6参照)「事件発生3日から4日前に朝の7時頃、Bポートの3階から4階に上がる非常階段で踊り場のところに双眼鏡でEポート方向を覗いている男がいた。目撃した新聞配達員が不審に思って『何をしているのですか』と声をかけたら、男は『警察だ。仕事中だから早くあっちに行ってくれ』と言ったそうだ。男は身長160センチから170センチくらいで年齢は30歳から40歳、白っぽいコートを着ていた」というものだ。
見つかった双眼鏡が関連しているのではないかと直感的に思ったという。

既にXの調べは1週間以上続き、進展が見られなかった。
連日の聴取のためX巡査長は職場である江東運転免許試験場をずっと欠勤し続けている。
そこで栢木らはパールホテルから引き上げることを決めた。
Xが同僚から不審に思われないよう、一度職場に顔を出させて何食わぬ顔で勤務させる。
勤務終わりで警視庁本部に呼び、本部3階の参考人調べ室で事情聴取を再開することになった。
【秘録】警察庁長官銃撃事件17に続く
【執筆:フジテレビ解説委員 上法玄】
1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。