2021年11月に新潟市の自宅で妻と娘を殺害した罪などに問われている男の裁判が新潟地裁で開かれている。証人尋問として出廷した死亡した妻の母親と弟は「無期懲役刑を望む」「死ぬまで一生悔やみ続けるべき」などと話した。また、被告人質問も行われ、男が不倫関係を続けてきた理由などについて答えた。
妻の弟が証言「反省できていないなら無期懲役を」
殺人や殺人未遂、殺人予備、窃盗など4つの罪に問われているのは、新潟市南区の元看護師・渡辺健被告(31)だ。
この記事の画像(4枚)起訴状などによると、渡辺被告は2021年9月、当時看護師として勤務していた病院から塩化カリウム10本を盗んだほか、11月には南区の自宅で、妻の春香さん(29)と娘の純ちゃん(1)の首をロープで締め付け、自殺を装い殺害した罪などに問われている。
11月6日の第6回目の公判では、殺害された春香さんの母親と弟が証言台に立った。
先に証言台に立った春香さんの弟は、かつての姉や純ちゃんとの関係について話した。
検察側:
春香さんとの仲はどうでしたか?
春香さんの弟:
悪くもなく普通だったと思います
検察側:
昔の春香さんはどうでしたか?
春香さんの弟:
家にいるときは勉強していることが多いなという印象でした。試験勉強などをしていました
検察側:
純ちゃんとの関係はどうでしたか?
春香さんの弟:
懐かれていたと思います。会いに行ったら遊んでくれて、帰るときに泣いてくれたりして、懐いていました
続いて、検察側からの質問は2021年3月に春香さんが交通事故を起こした当時の内容に。
検察側:
事故があったことは誰から聞きましたか?
春香さんの弟:
春香本人からLINEで
検察側:
いつ聞きましたか?
春香さんの弟:
事故を起こしたあと。1週間経ってくらいです
検察側:
どんな内容でしたか?
春香さんの弟:
実家に帰宅中で事故を起こしたと
検察側:
どうして事故を起こしてしまったと聞いていますか?
春香さんの弟:
本人自身も記憶があいまいで、気がついたら事故を起こし、近くを走っていた人が助けてくれたと聞きました
検察側:
事故の話や内容を聞いて、あなたはどう感じましたか?
春香さんの弟:
ただ事じゃないなと思いました
その後、検察から春香さんの110番、119番通報時の音声についての質問があった際には「いつもの話し方とは違い、イントネーションが変。声が裏返っていた。応答がぎこちない」など普段とは違う様子だったことを明かした。
そして、渡辺被告が春香さんを殺害した当日の流れについて聞かれると…
検察側:
2人が亡くなったことは、いつどうやって知りましたか?
春香さんの弟:
昼ごろに健さん(渡辺被告)から電話連絡がありました
検察側:
どんな内容でしたか?
春香さんの弟:
「春香と純が倒れている。ロープがぶら下がっている」と
検察側:
渡辺被告の様子は?
春香さんの弟:
ちょっと震えたような感じでした
検察側:
あなたは渡辺被告に何を伝えましたか?
春香さんの弟:
自分は「救急車を呼んだか?」と聞きました
検察側:
渡辺被告はどう答えましたか?
春香さんの弟:
「まだ呼んでない」と
検察側:
その答えにあなたはどう答えましたか?
春香さんの弟:
「すぐ電話するように」と伝え、「すぐに自分も行く」と伝えました
検察側:
渡辺被告からの電話を聞いて最初どう思いましたか?
春香さんの弟:
一番の印象は自殺かなと思いました
殺害後に渡辺被告から電話を受けた妻の弟
その後、渡辺被告の家に到着し、渡辺被告に続いて部屋の中に入った春香さんの弟。
検察側:
部屋には何がありましたか?
春香さんの弟:
仰向けで倒れている春香とすーちゃん(純ちゃん)がいて、春香の頭上にロープがありました
検察側:
どう感じましたか?
春香さんの弟:
すーちゃんを巻き込んでの自殺かと
検察側:
あなたはそこで何をしましたか?
春香さんの弟:
春香に人工呼吸をしました。健さんはすーちゃんを抱きかかえていました
検察側:
春香さんの様子は?
春香さんの弟:
春香に心肺蘇生をした時はすでに冷たい状態でした。気道を確保しようとしたけど、上あごが固く動きませんでした
検察側:
あなたはその時どう感じましたか?
春香さんの弟:
正直どうにもならないと思いましたけど、もしかしたら助かるんじゃないかと
検察側:
警察が来て、渡辺被告は何をしていたか?
春香さんの弟:
警察が来て、外で健さんが話しているのが玄関から聞こえました。やけに、はきはき話すなと
検察側:
渡辺被告が2人を殺したと分かったときどう思いましたか?
春香さんの弟:
正直、すーちゃんを殺したのが春香じゃなくてよかったと思いました。大事に育てていた子どもを手にかけていなくて
検察から被告人にどんな刑を望むかを聞かれると「全然反省できていないなら、世に戻すべきではない。死ぬなら勝手に死ねばいいし、反省も謝罪もいらないので極刑にしてほしい。死刑とまではいわなくても、無期懲役を」と渡辺被告への怒りをにじませた。
妻の母親「罪に見合った罰を…」
その後、証言台に立った春香さんの母親は、検察から春香さんが生まれた時の質問をされると、声を詰まらせ、泣きながら答えた。
検察側:
春香さんが生まれた時どんな気持ちでしたか?
春香さんの母親:
難産で3時間かかった。産まれてくる春香にもストレスがかかったと思います。ようやく生まれた時には小さくてかわいくて、「やっと産まれた」と思いました。女の子がほしかったのでうれしかったです
検察側:
どんな性格の子でしたか?
春香さんの母親:
優しくて、頑張り屋さん
検察側:
純ちゃんが生まれたときは?
春香さんの母親:
新型コロナの時で病院に付き添うことができず、本人からは生まれたという連絡だけありました
検察側:
どんな子でしたか?
春香さんの母親:
春香の小さい頃にすごく顔立ちが似ていて、すごくかわいかった
続いて法廷のモニターには、春香さんが毎日つけていた育児日記に載っていたイチゴの帽子をかぶった純ちゃんの写真が映しだされた。
検察側:
これはなんの写真ですか?
春香さんの母親:
春香が「いい写真が撮れた」と送ってくれた写真。くしゃっと、しわを寄せて笑った顔が春香にそっくり。これ以上大きくなる写真はないんだなと…
検察側:
2人が亡くなった連絡を聞いてどう思いましたか?
春香さんの母親:
春香がすーちゃんを連れていったと、無理心中かとびっくりしました。自分で自分の命を絶つなんて、全く分からないことだらけでした
検察側:
渡辺被告の自供の知らせを聞いたときはどう思いましたか?
春香さんの母親:
最初に警察から聞いたときには本当にびっくりして、自殺はないと思っていましたけど、まさか旦那さんに殺されたとは想像もしなかったので何も考えられなかったです。その時、隣に次女がいたので、声を振り絞って「健さんが…」と話しました。次女は聞いた瞬間に泣き叫びながら、「絶対に許さない」とわめき散らしたのを覚えています
検察側:
2人に再会したのは?
春香さんの母親:
遺体が安置してある病院でした。春香に触ったらほっぺたがすごく冷たくて「お帰りなさい」と声をかけたら、春香の左目から涙のようなものがつたいました。生きている時のまんまの顔で、声をかけたら起きてくるんじゃないかと思いました
そして被告人にどのような刑を望むか聞かれると…
春香さんの母親:
彼1人の命と春香と純の命ではバランスが取れない。2倍、3倍死んでほしいくらい。2回死んでほしいというのは本当に思う。死ぬまで一生悔やみ続ける人生でないと困る。罪と向き合って、罪に見合った罰を与えてほしい
被告人質問「不倫と夫婦関係両立できると…」
その後、今回の裁判で初めて被告人質問が行われた。
弁護側からの質問に対し、小さな声で淡々と話す渡辺被告。当時、職場の女性と不倫関係にあった点についても質問が及んだ。
弁護人から夫婦関係と不倫関係について問われると「自分勝手なことだと分かっていたが、なんとか両立できると思っていた」などと述べた。
また、渡辺被告は競馬投資の副業を始めるも詐欺だったことが分かり、約400万円の借金を負った。
その借金返済のため、妻の口座から無断で金を返済に流用していた渡辺被告。
弁護側:
あなたは借金の返済について何が心配でしたか?」
渡辺被告:
妻に私がお金を動かしていたことがばれてしまうと思いました
弁護側:
あなたはその時何をしようと思いましたか?
渡辺被告:
睡眠薬を飲ませることにしました
弁護側:
睡眠薬を飲ませようとしたのはなぜですか?
渡辺被告:
大事を取って外出しないのではと思いました
裁判は11月12日に結審し、判決は11月22日に言い渡される予定だ。
(NST新潟総合テレビ)