12年前に、岡山市の県立高校で男子生徒が、部活の監督から叱責を受け自殺した問題。

教育委員会が主体となって検討している再発防止策は、いまだまとまっていない。
平行線をたどる協議に、憤りを感じている遺族を取材した。

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男子生徒の父親は、「時間がかかるのは当然だと思うが、それだけ良いものができればいいのにと思う。時間だけがかかっているという印象」と話した。

報告書がまとまったのは、生徒の死から9年後

2012年7月25日、岡山操山高校の野球部マネジャーだった、当時2年の男子生徒が自殺した問題。

当初、自殺の原因は学校から明らかにされず、遺族が強く求め立ち上がった第三者委員会により、監督の叱責が原因と結論付けた報告書がまとまったのは、生徒の死から9年後だった。

その後、岡山県教育委員会は再発防止策を取りまとめるよう動き始めたが、その素案を公表したのは約3年がたった2024年4月、いまだに具体的な内容を詰め切れていない。

男子生徒の父親:
調査委員会が立ち上がるまで6年を要している。平行線のままずっと時間がたっていく感覚はすごくつらくて長い時間だった。調査報告書はできたが、またその6年間の状態に戻ったと感じている。

時間がかかっている原因について、男子生徒の父親は「学校側が直接の加害者なので、まともな再発防止につながりにくい環境にあるのかなと思う」と指摘し、学校側の不祥事に対する再発防止策を、教育委員会が取りまとめることに限界を感じている。

新たな再発防止策を作成するも…

再発防止策は現在、遺族の意見や県が選んだ4人の有識者からの指摘などを踏まえ、素案をもとに検討が進められている段階。

ただ、9月に示されたその修正案も内容が十分ではないと感じていた。

男子生徒の父親:
一番息子に響いたであろう言葉「存在価値はない」と、存在を否定されたような発言を野球部の監督からうけている。そういった部分は、いまのハンドブックの中では網羅されていない。具体的ではないので、とても再発防止に役立ちそうな感じはなかった。

一方、県教委は策定が遅れている理由として、外部有識者の選定に時間がかかってしまったためとしている。

そうした中、再発防止策の一つである体罰や、不適切な指導に関する教育動画の制作費を盛り込んだ補正予算案が9月の議会で提案された。
県教委は2024年度中の完成を目指している。

一般社団法人 ここから未来・大貫隆志代表理事:
先生からされていることの何が人格否定・人権侵害に当たるのかということを子供たち自身が学ぶこと、保護者も学び、先生方も学ぶためのツールとして動画などが非常に有効だと思う。もうひとつは、被害に気付いたときに相談できる中立的な窓口を作る必要がある。

動画は、遺族が12年前から特に強く訴え続けていたものだった。

男子生徒の父親:
今まで妻と一緒に12年間、県教委と対峙(たいじ)してきたが、24年3月に妻ががんで亡くなってしまった。せめて妻が生きている間に、妻と一緒に(動画を)視聴できればよかったと思う。しっかり具体性のある動画を作って、生徒や児童の心に響くような内容にしてもらいたい。

学校に通う生徒や、保護者の立場にたった再発防止策が求められる。

(岡山放送)

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