食の雑誌「dancyu」元編集長/発行人・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

植野さんが紹介するのは「オニオングラタンスープ」。

牛込神楽坂にあるビストロ「PAPRIKA(パプリカ)」を訪れ、淡路島産のタマネギをじっくり飴色なるまで炒めて旨味と甘みを引き出した、フランス伝統のスープ料理を紹介。

肌寒い時期にぴったり、体があたたまる一皿だ。

“プチ・フランス”牛込神楽坂で評判のビストロ

「PAPRIKA」があるのは、東京新宿区、牛込神楽坂。

「いわゆる神楽坂からちょっと離れていますが、昔からフレンチのお店があったり、イタリアンがあったり中国料理のお店があったり。住宅街なのにいろいろな美味しいお店が点在しているエリアなんです」と植野さん。 

新宿区の北東部に位置する「牛込神楽坂」や「神楽坂」は、古くからフランス文化を紹介してきた東京日仏学院を中心にフランス料理店やフランス人も増え、「プチ・フランス」と呼ばれるようになった。

開店から2年ながら地元の人気店に

牛込神楽坂駅から徒歩5分の住宅街に佇む、牡蠣とワインの小さなビストロ「PAPRIKA」。

4人掛けテーブル1卓にカウンター9席で、こじんまりしているが、温かみのある雰囲気の店内だ。

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オープンキッチンで腕を振るうのが店主の杉本惠介さん。

フランス料理で腕を磨き、外食系企業でメニュー開発や店舗の立ち上げを経験してきた飲食業界のスペシャリスト。

前職のオイスターバーでの経歴を生かし、全国各地から新鮮な生牡蠣を仕入れて提供している。

他にも、マグロ赤身カルパッチョやニース風ツナサラダ、鴨とイベリコ豚のリエットなど、ワインに合う手を尽くしたビストロ料理が並ぶ。

2年前に産声を上げたばかりの新店ながら、すでに地元で評判の人気店だ。

ドラマで見た料理をいま作っている

店主の杉本さんは、小学生の頃、休日に作ったホットケーキを両親に褒められたことから、料理に目覚めたという。

さらに同時期、テレビドラマで見て興味をもったのが「オニオングラタンスープ」だった。

「PAPRIKA(パプリカ)」店主の杉本惠介さん
「PAPRIKA(パプリカ)」店主の杉本惠介さん

杉本さんは「再放送かで見ていたドラマが『前略おふくろ様』で、お母さんが“オニオングラタンスープを食べたい”ということでレストランに行って食事をするシーンがあって。“美味しそうな食べ物だなぁ”と思って頭に残っていたんです」「その後、料理の修業をしているうちに“これがあの時の料理だったんだ”と。そのシーンで見たものを今、僕が作っているのもすごいと思います」と語る。

そんな料理の世界へ入る事を決意したのは20歳のとき。

まずはホテルのレストランで西洋料理の基本を習得し、フランス料理店を4店舗ほどまわり、フランス料理の基本を学んだ。

店では産地の異なるカキの食べ比べもできる
店では産地の異なるカキの食べ比べもできる

そして30歳の時、さまざまな形態のレストランを展開する外食企業に就職する。

「そこの仲間たちと一緒にお店を一から作り上げていく。そこで“オイスターバーをやってみたいね”という話からカキの産地をまわることができた」と杉本さん。

コロナ禍で“やりたいこと”を再確認

全国のカキの産地をまわって生産者の話を聞き、知識を深めた杉本さんは「海が違うとカキの味ってこんなに変わるのか!」「おもしろい!もっとみんなに食べて欲しいなぁ」という気持ちを強く抱くようになったという。

それと同時に、自分の店をいつか持ちたいという夢も生まれる。しかし、さまざまな店の立ち上げを任されるなど職場での体験が魅力的で、なかなか独立に踏み切れないでいた。

杉本さんは、その時の心境を「コロナで飲食店が大変な時があって、“本当に自分がやりたいと思っているか”をまず自分で確認して。やっぱり最後は自分の店を持ちたいというのが本当の夢だと思って、ここは腹をくくるしかないと思いました」と振り返る。

2022年11月、まだ新型コロナウイルスの不安が残る中、念願の自分の店を開店。杉本さんは「地元の方々が我が家のように愛してくれる店に」と目標を語った。

本日のお目当て、PAPRIKAの「オニオングラタンスープ」。

一口食べた植野さんは「タマネギの深い甘みがじわ~っと広がる、ほっとする美味しさのあるスープ」と感動。 

PAPRIKA「オニオングラタンスープ」のレシピを紹介する。