9月は体育祭シーズン。創立130年を迎え男女共学となった鹿児島市の鹿児島商業高校では、女子生徒を交えての初の体育祭が行われた。男子校時代からの変わらぬ伝統の中に、共学化で新たに生まれたドラマも広がっていた。
男子校「鹿商」が男女共学化
鹿児島市立の鹿児島商業高校は公立の商業高校としては全国唯一の男子校だったが、創立130年となる2024年度、男女共学にかじを切った。9月18日、鹿児島市の西原商会アリーナで行われた体育祭も、女子生徒が加わって初めての開催となった。
鹿児島商業高校3年・松下翔さん：
130年を迎える節目の時に、私たちは学科再編と男女共学という、大きな変化の時を迎えました。私たちは本日の体育祭を全力で楽しみ、素晴らしい体育祭にすることを誓います。
オープニングでは女子生徒が笑顔でダンスを披露。続いて男子生徒が披露したダンスも会場を沸かせた。
スローガンは「新生鹿商」
2024年の体育祭のスローガンは「新生鹿商」。そのスローガンの通り、全16種目のうち6つは新しい種目。生徒も気合い十分だ。
「共学で初めの体育祭ですごく楽しみだったので、みんなで頑張りたい。綱引きで頑張りたい」と張り切る1年生の女子生徒。初めて女子生徒も参加する体育祭に3年生の男子生徒も「今まで灰色だった学生生活に色が出た感じです。新しくなった鹿商なので、ここから新しい文化を築いていこうと思います」と興奮した様子で話した。
まずは新種目「ダッシュ王決定戦」。その名の通り、各クラスの足自慢たちが40メートルをダッシュ。勝ち抜いた生徒たちで決勝を走り、1位を決める。会場の熱気も序盤から最高潮に達した。
初代王者に輝いたのは3年生の川崎隼人さん。元陸上部主将の意地とプライドをかけて臨み「初代（ダッシュ王）という名を手に入れることができて良かったです」と笑顔を見せた。
クラス対抗で行われた体育祭は、趣向を凝らした種目もあり、学年の枠を越えて絆を深めていた。
女子生徒だけで行われたのが「宅配便リレー」。次の走者につなぐたびに段ボール箱が1つずつ増え、なかなか前に進めない場面も。バランスをとりながらのレースに苦戦しつつも、生徒同士で助け合いながら最後まで楽しみ、参加した女子生徒は「難しかったけど楽しかった」と振り返った。
「鹿商」の伝統種目に女子生徒が参加
こうして、新しい風を取り込む一方で、鹿商ならではの伝統種目も実施された。
「チンチンチャイナマイノウェルウェルローン！」という不思議な歌詞を、男子生徒が野太い声を張り上げて歌い、舞う「チンチンチャイナマイ」。中国の大学の寮歌が原曲といわれ野球部の応援にも使われるが詳しい由来は分かっていない。体育祭のプログラムに採用されたのは2004年からだ。
「倒立競争」も伝統の競技のひとつ。創立80周年、1974年の体育祭のフィルムには、丸刈りでたくましい身体の男子生徒が体を張る光景が残されていたが、共学化初年度の2024年は雰囲気が一変していた。
黄色い声援を送られていたのは、女子生徒として初めてこの競技に参加した東桃羽さん。倒立しながらどこまで進めるか、距離を競うこの種目。安定した倒立でどんどん前に進んだ東さんは2位と大健闘！「ちょっと悔しいけど上位になれてよかった。来年は1位を取れるように頑張りたい」と早くも来年への意欲を見せた。
そして、2024年度、新たに誕生したチアリーディング部も、生徒や保護者を前に初めて演技を披露。大きな拍手を浴びた。
変革と伝統が融合した体育祭に
鹿商にとっては「変革」を迎えた2024年。半年後に卒業を控えた3年生にとっても特別な大会となったようだ。
3年生の男子生徒は「最高です」「最初のオープニングダンスが今までの鹿商にはなかったので、最初としてはいい盛り上がりだった」「黄色い声援っていうのを最後の年に感じることができてうれしく思う」と話した。
OBでPTA会長の上野博史さんも「男の子だけでも盛り上がるが、やはり女性のパワーがあるとなおさら盛り上がっている。伝統を守りつつ新しいアイデアを取り入れて、さらに発展していく体育祭を楽しみにしている」と一層の期待を寄せた。
「新生鹿商」のスローガンのもと、変革と伝統が融合した2024年の体育祭。男女共学となった鹿児島商業の歴史は、着実に新たなページを刻んでいる。
（鹿児島テレビ）
